私と冬の思い出

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 【SideB】  クリスマスマーケット。幼少期に行って迷子になって怒られた場所。今となっては笑い話だけど、当時は物凄く落ち込んだことを思い出す。その時は幼馴染がいて、2人まとめて怒られたっけ。音楽を爆音で聴きながら雪道を歩く。  あいつ元気にしてるかな?  家は近いけど、あいつ自身出不精だからなかなか出ないんだよなぁと思いながら、耳に流れる季節に見合わない真夏の曲を頼りに歩いていると、見覚えのある人影を見た。あれ、どう見てもあいつじゃね?割と頻繁に会ってはいるけど、大きくなって冬の姿を見るのは初めてだった。どうも身体が弱いようで、去年は流行り病に苦しめられていたとか。本当に大変だな、あいつは。  そうそう、私が昔怒られたクリスマスマーケットって思ったより近所だったことを最近知った。なら怒るなよーとか思ってたけど、私らがちっちゃかったからしょうがないね。子どもって好奇心で生きる生き物だからさ。  図書館を過ぎる辺りで、あの見覚えのある人影は幼馴染だとわかった。あいつの好きな系統の服だし、その人が着てるふわふわの服は、去年の秋に「この冬は着るんだ」と意気込んで買ってたやつだ。背格好からしてもあいつに間違いないだろう。とはいえ、あいつはちゃんとビビりなので、後ろから驚かせるには足元が危なすぎる。流行り病の巣ごもり指示がなくなったとはいえ、運動も苦手なあいつは確実にコケる。私の経験から言える。後姿を追いながら、クリスマスマーケットに向けて歩みを進めていく。なんか、今行っておかなきゃいけない気がして。思い出のクリスマスマーケットに行くならあいつを誘い出してやる。そんなことを考えてたら、あいつの真後ろにいた。あ、そうだ、ここでボソッと誘えばいいんだ!  『ねえねえ、あっちでクリスマスマーケットやってるんだって』  不審そうに振り返った人は、私がよく知る幼馴染だった。人違いじゃなくてよかった。  『久しぶり』  『まって白々しくてウケる、とりま行こうぜ!』  いつものテンションで緊張を誤魔化してみるけど、内心バクバクなの絶対バレてるよな。もし言われたら寒さのせいにしちゃお。久々の会話に胸を弾ませていると目的のクリスマスマーケットに着いた。  『着いたー!』  『あ、イルミネーション、すごいな』  『でしょー??ここ、もう一度あんたと行きたかったんだよね!』  表情がぱっと明るくなる。あぁ、こいつ同じこと考えていたんだ。嬉しくて泣きそうになった。てかこんなに可愛かったっけ?どうせ思い立っておめかししたくせに、自分のためにしてくれたと勘違いしてしまう。緊張と恥ずかしさで真っ赤になってるであろう私の顔は、イルミネーションが優しく隠してくれた。猫舌なのに懸命にココアを飲む姿を見て、こいつのことこれからも守ってやる、と誓ったのはまた別の話。
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