小学生、そして出会い。

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「ごめんなさーい、遅くなっちゃった。 郵便屋さんの恰好をした霊が手紙を持って迷ってたから、 言い聞かせて成仏させてたのよ」 「あ、その人、私もよくみかけます。成仏できたんだ......。よかった」 それでまた泣けてしまった。 那由多の母親がティッシュボックスを僕に渡してくれた。 「心配してあげてたのね。良い子ね。夕飯の作りがいがあるわ。 たくさん食べていってね」 「ちょっとお母さん、あたしは良い子じゃないみたいに言わないでよ」 「那由多は良い子っていうか元気すぎる子。 円ちゃんみたいな可愛らしい子とは違いすぎ」 私はティッシュで涙を拭きながら笑った。 そして一生、忘れられない日になると実感した。 生まれて初めて......霊感があることに理解者を得られたのだ。 しかも一気に3人も。 那由多の母親が食事を作り始め、那由多もキッチンで手伝っている。 それで私はおもわず、那由多の父親に『小3のときに教室にいた パンツだけのオジサン』について、聞いてみた。 「君のクラス、そのときに大きな病気をした男の子がいたんじゃない?」 「あ、はい、いました。難しい手術が成功したけど、しばらくは 激しい運動は無理で、体育や運動会もできなかったです」 「パンツのオジサンはね、その子の隣人だよ。両親とも仲が良いから、 その男性の家に遊びに出向いたり、小さい頃から、なついていたんだ。 でもね、自宅で風呂上りにパンツをはいたとき、つまづいて倒れて、 そのときに頭を打ったのが原因で亡くなってしまったんだよ」 「そ、それで、パンツだけ?」 「死んだら、死んだときの恰好で霊になっちゃうからね。 で、その子の病気が回復するまで、 ずっと心配で、それで教室で見守っていたんだよ」 「あぁ、それで小学4年になってから消えたのかな? その頃には、彼はすっかり健康になってたから。 あぁぁぁぁぁっ!気持ち悪いとか言ったり、思ったり、ごめんなさい!」 「まあまあ、パンツだけとか、大人でもビビるよ。そりゃ仕方ないさ」 「そ、そうかな。とにかく、ありがとうございます! ずっとモヤモヤしてたから、スッキリしました」 「そうか、それは良かった。でも、こんなにプライベートなことは、 あんまり見ないようにしてるんだ。 今日、言ったことは、全部ナイショにしてほしい」 「そっか、そうですよね。わかりました!」 「ありがとう、こちらも助かるよ」 父親のさわやかな笑顔のあとに、母親のおいしい料理ができて、 那由多の明るいお喋りが始まった。
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