小学生、そして出会い。

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京さんと涼子さんは見合い結婚なのだそうだ。 豪華な料亭で見合いの席をセッティングされ、豪勢な和風料理が和室の テーブルに並び、襖が開けられて中庭が見えていた。 そして2人は向かい合って見つめ合って、少しの沈黙のあと、涼子さんが 言った。 「夏野さん、1人連れてきてますね」 2人の席の真ん中に座っていた仲介の女性は意味がわからなかったが、 京さんは照れくさそうに頭を掻いた。 「あ、見える方なんですね。はい、ここに来る途中で病院を 通っただけなんですけど」 そして京さんは右手の人差し指を額に当てて目を閉じた。 「お年寄りの男性でしょ?視力が弱くて、道がよく見えないんだそうです。 それで僕についてきちゃったそうで」 「そうですか。霊視ができる体質の方なんですね。 あの、ちょっと失礼します」 涼子さんは立ち上がり、京さんのほうへと移動して、京さんとは斜めに 座って、背中のあたりを見つめた。 そのときの優し気に微笑む涼子さんの横顔に、京さんはみとれた。 「そう、そうなんですね。それは良かったですね」 なにもない空間へと涼子さんは語り始めた。 そして料亭の庭を指差した。 「あちらの明るい光のほうへと進んでください。 ゆっくりで大丈夫ですよ。そしたら、行けるべきところへ逝けます」 「なに?なに?なに言ってるの?涼子さん!」 仲介の女性は怯えて混乱していたが、京さんは丁寧に頭を下げて微笑んだ。 「ありがとうございます。僕は除霊のほうはできなくて、 寄せ付けたり、霊視したりだけなんです」 「夏野さんは優しいから、霊が頼ってくるんですよ。 素敵な方とも言えますね」 そうして涼子さんは、京さんの魂の清らかさにも魅かれたのだそうだ。 そこから先は、2人で仲介の女性に恐がらせたことを詫びて、和やかに 会食した。 その後、2人とも趣味のほうでも気が合って、短期間で結婚となったのだ。 甘いというか、ダイナミックな出会いだなあ......と、私は驚いた。
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