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夏野家から帰宅した私は、両親に告白した。
「お母さん、お父さん、ごめんなさい!辛いカレーは苦手なの!」
と、勇気を出してちゃんと言えた。
「なにそれ、すぐ言ってくれればよかったのに!
あんた何年間も食べたくないもの食べてたの?ビックリだわ。
あ、円は、気の弱さとか遺伝しちゃってるかな......ごめんね」
いえいえ、お母さん、私は気は強い方です。
むしろキレるとヤバイと、自分でビックリしたからね。
今日の幽霊騒動で。
でもそこはやっぱり話さないでおく。
「だって、お父さんが......辛いカレーが好きだし」
そこなんだなあ、これも言い出せない理由のひとつだった。
「円、神代家には鍋が三つもあるんだぞ!
辛いカレーと甘いカレーと同時につくれるんだ。
どうだ、スゴイだろう我が家は!」
お父さん......今日の私の豪快さは父親の遺伝かもです。
なんだかよくわかんないけど涙がこぼれてきた。
それはもしかしたら、いろんなことを我慢してきた心のダムが
決壊した瞬間だったのかもしれない。
那由多が......。
夏野那由他が、私にくれたもの。
それだけは確かだった。
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