小学生、そして出会い。

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教室では、私の席は窓側にある。 窓越しに下をみると、用務員のおじさんが花壇の手入れをしている。 いつもいつも、ずっと......。 要するに幽霊だ。 幽霊の時間感覚って、どうなってるんだろ? 同じ場所にいて飽きないのかなあ?   「ねえ、かみ、えーっと、ごめん、なんだっけ?」 夏野那由他が私の席へと近づいてきた。 「神代 (かみしろ)よ。まあ、私は名字も名前も読みにくいよね」 「そうそう、神代円ちゃん、なにボーッと外をみてるの?」 「ま、まどか、ちゃん?」 「ん?なに?読み方は合ってるよね?」 「う、うん」 「で?なにみてたの?」 「え?あぁ、天気が良くて空が綺麗だなあ......って。 東京からきた夏野さんには、こういう山々の景色ごと 新鮮なんじゃない?」 「うん!空気もすごく澄んでる。ほんと綺麗。 あ、遠くだけじゃなくてさ、下の花壇も綺麗だよね。 前からこんな感じなの?」 「うん、ずっと、誰も手入れしてないのに」 「そっか、心をこめて育ててくれた人の魂があるんだね」 「たましい......?」 「そう、魂、愛情」 「そうか、そういうことなんだ」 やっと私は納得できた気がした。 人の『魂』が、そこにはあるんだ。 それだけのことなんだね。 「おぉっ!委員長にまでグイグイいくとか、さすが那由多ちゃん!」 しみじみしていたら、男子が割って入ってきた。 「なに?円ちゃんは委員長なの?」 「うん、一年のときからずっと委員長、すごいだろ? だから神代ってさ、普段から委員長って呼ばれてるんだぜ」 「えぇっ!すごいね、優秀なんだ?」 私は黙っていた。 ほんとうは『委員長』と呼ばれることが嫌だと言えなかった。 だから。 夏野那由他がサラリと『まどかちゃん』と、呼んできたのが 驚くやら恥ずかしいやらで戸惑ってしまった。
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