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田舎でクラスが1つしかなくて、幼稚園から中学まで同じ顔ぶれ。
クセのあるタイプとか、めんどいタイプとか、色々だけど、陰湿な
イジメとか無いだけ平和だとおもう。
そして私も、みんなと上手くやってる。
ちがう、上手く合わせてる。
もう普段のノリで委員長にされることもあきらめた。
だけど、そういうことじゃなく、私は孤独だった。
幽霊が見えることを共有できる相手がいないからだ。
だから『仲間』『友達』それこそ『親友』は、いない。
そんな感じだから、日曜日の午後でも遊ぶ相手はいない。
私は独りで数学の問題集を買いに出かけた。
勉強は嫌いじゃない、むしろ黙々と学ぶ時間のほうが満たされる。
でも『委員長』がニックネームなのは適当すぎるというか。
親しみを込めて言われてるわけじゃないから、抵抗がある。
そんなことを考えてたら......。
人のいない山道で、夏野那由多と出くわした。
正確には、若い男に手を引っ張られて抵抗しているところに。
「離して!離してよ!もういいかげんにしてよ!」
「夏野さん!」
私は相手が大人でも躊躇せずに駆け出した。
その男が幽霊だったからだ。
いつも見るような、人に近いハッキリしたものとか、半透明で
ぼんやりしてるとかじゃなくて、そいつは身体が薄墨のように
不気味な色をしていた。
初めて見たけど、なにか悪い奴ってのだけはわかった。
いつも活発な彼女が泣いていたからだ。
「その汚い手を離しなさいよ!」
私は幽霊の手を掴んで夏野の手から引き剥がした。
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