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「なんだてめえ~なにしやがるんだ~!」
ボワボワとした変な声で幽霊が言い返してきた。
「それはこっちのセリフだよ!あんたこそ女の子を泣かせて......
なにしてんのよっ!!」
私は咄嗟に、男の手を掴んだまま片手を振り上げた。
すると男には体重ってものが無いくらい軽くて、投げたボールみたいに
身体がフッ飛んでいった。
しかも空の向こうへと『ぎえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ』と、叫びながら
消えて、見えなくなった。
「え?そこまで?」
幽霊を投げ飛ばしちゃったよ......。
自分でやって自分でビックリして、私は呆然と立ち尽くした。
え?これやりすぎた?
「円ちゃーん!ありがとうーっ!」
夏野が私の肩へと顔をうずめて、私のブラウスを強く掴んで泣き出した。
身体が震えているのが伝わってきて、別の意味で戸惑ってしまった。
「あいつね、あいつね、東京にいた頃から、つきまとってきてたの。
こっちにまで追いかけてきちゃったの」
「えーっ!東京から?」
「霊って、距離は関係ないから」
「そ、そうなんだ?え?は?っていうか、夏野さんって......」
「うん、霊感持ち。円ちゃんもだよね?最初からわかってたよ。
でも周囲には隠してるっていうか、
心を閉ざしてる感じだから、黙ってた」
そういえば、転校初日で那由多が僕に言った言葉......。
『そうなんだ、すごい!奇遇だね!いろいろと』
あの『いろいろ』って、そこだったんだ。
「円ちゃん、うちに来て!お父さんとお母さんが大喜びするよ!」
「え?いや、あの......」
と、引き気味な私の手首をグイグイとひっぱられて、自宅へと
連れて行かれた。
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