幼少期の私を救え!

1/1
前へ
/5ページ
次へ

幼少期の私を救え!

よし、まず幼少期の私を救おう。 深い深呼吸を2回し、記憶と重ねた妄想が始まる。 (公園に遊びに来ているわね) 美玲は記憶を辿っていき、真っ赤なサルビアが花壇いっぱいに咲いている公園へ入って行く幼い美玲を眺めた。 (よく覚えているわ。本当にきれいだった。ふふ。美玲ちゃん、楽しそう…あ!) 幼い美玲は手当たり次第サルビアの花びらをちぎっては蜜を吸い始めた。 (やめて!こら、美玲!なにやってるの!ほら、他の子も集まって来ちゃったじゃない!器物損・害・罪!) 無邪気に笑う“幼な子美玲” (そう。やってた。ほのかな甘みが嬉しかったのよね。分かるわ。本当は今だってやりたいもの) 大人美玲は心の中で“時効”という便利なワードでなかった事にした。 あれ?いない。 姿が消えたかと思ったら、突然大人美玲の頭の後ろから幼な子美玲の声がした。 「このかだんをとびこえてぇ、てつぼうをくぐってぇ、こうえんをグルっとしたらゴールね!」 そう言うと、幼な子美玲は勢いよく走り出した。 小さな花壇をひとっ飛びし、鉄棒をくぐって行く。 「みれいちゃーん、がんばれー」 近所に住む仲良しの飛鳥ちゃんが声をかけてきた。 (振り向いちゃダメよ!ほら、そこに半分だけ埋まったタイヤがある!) 「あすかちゃんもはしろー!」 幼な子美玲は呼ばれた事が嬉しくて満面の笑みで振り向き、見事につまづいて、転んだ。 ダメだ。私だもん。振り向いちゃうよね。 止められなかった。 ふと自分の膝を見る。 (たくさん転んだな。この膝の傷は園内の広場で転んだ時のだ。そうだ、お風呂に入る時、傷が浸からない様に足を上げながら入ったっけ) 不思議と痛さの記憶はなく、いかに湯船に付けないでお風呂に入れるかというゲームを思い出した。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加