ひとつ布団の中で

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「何ニヤニヤしてんの?」 「ちょっと思い出してたんだぁ」 「なに……を?」 「小学校の修学旅行の時の〜」 「言わなくていい」 「えっ、美緒は忘れちゃったの?」 「うん、すっかり」  嘘だけど。 「同じシュチュエーションだから思い出すでしょ、普通」 「5年も前のことなんて忘れる」 「よーし、思い出させてあげよう」  嘘、本当に入ってきた! 私の布団に。 「ちょっ、まじ?」 「やっぱり狭いね」 「そりゃ、お互い成長したもんね」  小学生と高校生の体格では大きな差があるでしょーよ。 「中学の修学旅行、行けなくて残念だったね」 「あの時は、ごめん」 「なんで美緒が謝るのさ」 「だって私がおたふく風邪なんかになったから」  私が行けないのは当然だけど、純ちゃんも行かなかったのだ。後で親に聞いた話では『私が美緒の看病をする』って言い張ったらしい。そうして2週間後に純ちゃんのほっぺも見事に腫れ上がったというね。 「美緒と一緒じゃなきゃ意味ないもん」 「またそんな、調子いいこと言って」  私と純ちゃんは、小学生の頃からずっと仲良しだ。私はと言えば、修学旅行で告白した通りずっと好きだ。一緒の高校へ通いたくて猛勉強した程に。  だから同じクラスになって修学旅行の日を迎えた今日は、天にも登る気持ちなのだった。 「ねぇ、覚えてる?」 「だから忘れたって」 「え、もう私のこと好きじゃないの?」 「えっ、それは……好きだけど」 「ふふ、だよね。私もだよ」 「え、えぇ」 「ちょっと美緒、声大きい」  あっ、周りにクラスメイトがいるのを忘れていた。忘れるほど驚いたのだ。 「だって純ちゃん、そんなこと一度も言わなかったじゃない、5年間ずっと一緒にいて」 「5年間一緒にいて気づかなかったの? 美緒は鈍感だなぁ」  純ちゃんは優しかった、いつもそばにいて私が困っていると助けてくれたり、嬉しいことがあったら自分の事のように喜んでくれたり、何にもなくてもニコニコと笑いかけてくれた。そうなの? 好きだったの? 「いつから?」 「あの時からかなぁ、だって、好きって言われて意識するなって方が無理があるでしょ」  私が思わず好きと言った日から意識し始めたらしい。なんだか気が抜けた。 「あれ、また熱ある?」  純ちゃんはおでこをくっつけてきた。子供みたいに。 「え、純ちゃんだって熱くない?」 「そりゃあね」  そう言うなり、チュッとキスをした。 「えっ、えっ、なに?」  一瞬すぎて味わえなかったよぉ。  それでも、気持ちが通じ合った幸せを噛み締めた修学旅行の夜。
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