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何も変わらない、そう信じていたのにそれが覆されたのはそれからたった半年後のことだった。
祥太朗さんは新しい環境で実に生き生きと働いていた。
忙しそうにしているけれど、前のようにヨレヨレにはならず今まであまり見たことがなかった高級なスーツ姿も新鮮だった。
帰宅時間も毎日遅く、2人で食事をするのは朝食を含めても週に数回。
祥太朗さんは休日も予定がぎっしりで私はひとりで過ごすことが増えていた。
それでも同じ屋根の下にいる生活は楽しかった。
別々に暮らしていたらちらっとでも顔を見ることも叶わないようなことになっていただろうから。
だけどーーーーーーーーーー
「え、海外勤務?」
「そう。何ヶ国の支社を回るか、いつ戻ってくるか全くわからない。・・・・・・だからごめん。俺、伊都に待っててとは言えない」
衝撃だった。
海外に行ってしまうことも連れて行ってもらえないことも。
そして待たせてももらえないことも。
「それって別れるってこと?」
「・・・・・・うん。伊都は自分の幸せ見つけて欲しい。結婚したり子どもだって欲しいよね。俺じゃあ何年待たせたらその夢かなえてあげられるのかわからないし」
「遠距離恋愛っていうのはーー-」
「無理だよ。伊都はさみしがり屋だし、俺はたぶんそんな伊都のことが重くなる。今は仕事に集中したいんだ。一番下っ端でやらなきゃいけない事、要求されていることも多いし、それにそれが楽しいしやりがいもある。このまま付き合ってても伊都のこと優先してあげられないと思う。憎まれる前に離れたいんだ。本当にごめん」
いきなりの別れ話に心が凍り付いた。
海外勤務が決まったから別れるって。
今のマンションは引き払い家具も家電も雑貨もほとんど捨てていくという。
おまけに恋人であったはずの自分さえもういらないと言われてしまえばわたしにもプライドがある。縋り付くことなんて出来なかった。
二人の間に結婚話が出たことはなかったし、わたしもせかすようなことを言った記憶は無いけれど、祥太朗さんはどこかで私のそんな気持ちを感じ取っていたんだろう。
逃げられるうちに逃げ出したいと思ったのかもしれない。
「・・・わかった。お別れだね。どこの国に行くのか知らないけど、祥太朗さんならどこでも大丈夫そうだし心配はしないから。がんばって」
ショックで心が割れてしまいそうだったけれど、自分がいらないと言われたことが衝撃過ぎて涙は出なかった。
ただわたしは普通に捨てられた。
不要品として。
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