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「・・・・・・で、実際のところふたりってどういう仲なの?」
「え?この流れでそんなこと聞きます?」
私は全く知らないけど、イチくんの歴代彼女とほど遠い感じの私に。
「知人かなあ・・・それとも友人?ああ、イチくん苺狩りの時にファンの子どもに私のこと『ダチ』って言ってましたね。だからたぶん友人です」
「友人なの?」
「ええ。たぶんですけど。只の知り合いよりはちょっと親しいかなくらいではないかと」
「ねえねえ、イチにこの際ちゃんと付き合おうとか、一緒にドイツに行こうとかってホントに言われてないの?」
「言われてまーーーせーーー」ん?
ちょっと待て。海外に行こうみたいなことは言われたことは言われた。
けど、もうすぐ日本を離れるというのにあれ以来イチくんからは何も言われてないから今では聞き間違いだったのかと思っているし、田口さんの奥さんが期待する方向とは違う気もする。
「付き合おうなんて言われてないです」
「ええー、そうなのねーーー」
明らかにがっかりとさせてしまったのだけれど、仕方ない。
「ちっ。アイツ、ガキか、ヘタレか」と上品な田口さんの奥さんの口から荒っぽい言葉が小さく聞こえた気がしたけれど、これもたぶん気のせいだ。たぶん。
「友人とか知人とかダチなんて、全然色っぽくないじゃない」
「ご期待に添えずなんかすみません・・・・・・」
田口さんの奥さんはどうやらそっち方向を期待してくれていたらしい。
いや、イチくんと私ってーーーちょっと無理があると思う。もちろんイチくんの好みのタイプとも違うみたいだし。
「伊都ちゃんはそれでいいの?イチについて行きたくないの?」
「えーっと、今までイチくんに対してそういうこと考えていなかったので・・・・・・会えなくなったら寂しいとは思いますけど、わたしはサポーターとして応援する気持ちなので」
「あらあ。イチは伊都ちゃんから男として何とも思われてないってことなのかぁ・・・・・・なんだかかわいそうになってきたわ」
「いえ、むしろ私がイチくんのこと男性だと意識していたらこんな風に付き合ってなかったんじゃないかと思うんですよね。イチくんって女嫌いみたいなところがあるし」
「女嫌い?あれが?」
「まあ女嫌いは言い過ぎですけど。でも男性や子どもに対するファンサービスと女性に対するものはずいぶん違いますよね。思ったよりチャラくないというか、丁寧だけど一線引いてるっていうか。一線どころか渡れない川みたいな」
私と知り合う前のイチくんのことは知らない。
他の人たちに言わせると以前のイチくんは来る者拒まず的なチャラいひとだったっぽい。
けれど、私が生で見たイチくんは何だかこうちょっと女性に対して退いてる気がするのだ。
女の子には気安いから女嫌いとは違うかもだし、ただ女性に気軽に接して誤解されないようにしてるだけなのかもしれないけれど。
とにかく子どもや男性ファンにはフレンドリー、女性ファンには丁寧。
「私もですけど、イチくんも私のことは女性っていうより従姉妹のおねーちゃんくらいに思ってるんじゃないかと」
だからこそ私には気軽に声を掛けてくるんだと思う。
「えー?そう?」
「そうです」きっぱりと言い切ると「なあーんだ、残念」と田口さんの奥さんはがっかりしたようだった。
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