思い出は胸に痛い

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しかしあれから3年、さすがにもう昴は一緒に寝てはくれない。 非常に残念だ。 あと半年もすれば昴の弟か妹がこの世にでてくるから、成長を待って今度はその子に一緒に寝てもらうことにしようと思う。 そうやって失恋の傷を癒やしたというのにーーーーー 神さまは意地悪だ。 3年ぶりに見た祥太朗さんは穏やかでふわりとした印象がすっかりそげ落ちていて、きりりとしたいかにも仕事が出来る男性になっていた。 大企業の責任ある職に就いているのだから当然なんだろうけど。 もうわたしが知っている祥太朗さんではない。 きっちりセットされたヘアスタイルからは寝癖がぴこんと立っている様子は想像できないし、目力も違う。あんなに鋭いものじゃなく強いけれどもっと優しい瞳だった。 わたしの知っている祥太朗さんはもうどこにもいない。 あの時私はすっぱりと切り捨てられた。 けれど、私の方はもしかしたら今日までは心のどこかで再会を望んでいたのかもしれない。 やり直したいのではなく、見返してやりたい。 私はひとりで立って歩いてるって。 結婚に逃げようとしていた甘えた女じゃなくて自立した大人の女になっているって。 私を捨てたことを後悔したらいいなんて。 でも、 今日はっきりとわかった。 祥太朗さんとわたしが再会し交わる未来などどこにもない。 同じ国にいても違う世界の人だ。 完全に断ち切られていた。 後悔するなんてとんでもない。 彼のまわりにいる人はおそらく最上級の人たちばかり。 私のことなど忘れているかもしれないし、もしかしたら黒歴史になっているのかもしれない。 私は死ぬ前になったら思い出してもいい。 若かった頃、あんな素敵な人と2年もの思い出を作ったんだな、なんて。 だからその時まで私は過去を封印する。
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