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思い出は胸に痛い
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秋が深まりハロウィンが終わると世の中はクリスマスに向かって一直線に向かっていくような気がする。
「はー、どいつもこいつもクリスマスって浮かれちゃって。何がクリスマスよ。そんなことより師走なんだからもっとすることがあるでしょう。日本人ならお正月の準備しなさいよ」
「なにそれ。伊都ちゃん、やばっ」
わたしがクリスマスムード一色になった町並みに文句をつけると小学4年生の甥っ子の昴(すばる)がドン引きしていた。
「だってどこもかしこもクリスマス、クリスマスって」
「いいじゃん、飾りはキラキラして綺麗だし、プレゼントはもらえるし」
「ああ、そうね。昴はたくさんもらえるよね。サンタさんを筆頭にいろんなところから」
サンタクロース役の両親、父方と母方の祖父母に叔母の私。
それになぜか毎年同級生の女子からももらったりすることがあるらしい。
(当然バレンタインデーはたくさんもらってくるから、お返しするのが大変だと姉が言っていた)
「え、伊都ちゃんは誰からもプレゼントもらえないの?」
「もらえないわよ。成人したわたしに誰がくれるの。サンタ?それとも実家の両親?」
「大人になるとサンタは親じゃなくて恋人なんでしょ」
えー。
甥の口から聞きたくない言葉が出た。
サンタクロースは実は親だったとか、大人には恋人とか。
うちの甥っ子はいつからサンタクロースは親だと知っていたんだろう。
確か姉夫婦は息子の喜ぶ姿を想像してわくわくしながら去年も昴が寝付いた夜中に枕元にクリスマスプレゼントを置いていたはずだ。
「昴はすっかりお兄ちゃんになっちゃって。去年まではサンタクロース信じてたじゃない」
「小学生も高学年になるといろいろ現実を知るんだよ。ーーああ、でもパパとママには秘密にしといてね。今年も夜中にこっそり置いといてくれるからさ」
「知ってるならそのまま貰えばいいじゃない」
「でも、去年ママにプレゼントを入れてもらうための靴下の形した大きな袋を買ってもらったからさあ、それ使わないとなんだよ。それに朝起きて靴下の中にプレゼントが入ってたら嬉しいじゃん」
昴は年齢相応の笑みを浮かべた。
枕元にその靴下の形の袋を置くのがいいのか。
そうか。うん、なんかわかる。
「伊都ちゃんは誰からももらえないの?」
そっちに話が戻ってきてしまった。
澄んだ目をした甥の質問が胸に突き刺さる。
・・・・・・やさぐれてもいいかな。
「貰えませんね」
「じゃあおれがあげる」
「え!うそ、昴がくれるの?欲しい、ぜひお願いします。でももうどんぐりの詰め合わせはもうやめてね。あの時、後で部屋の中にイモムシが2匹散歩してるの見つけて気が遠くなりそうになったから」
数年前、幼い昴から木の実を数個プレゼントされたから部屋に置いておいたのだけど、どうやら中に虫が卵を産み付けていたものがあったらしくめでたく孵化していたというわけだ。
「それは幼稚園の時の話でしょ。おれもう10才だから」
おおう。
まだ10才でも既にもうオトコだ。
発言が男っぽい。
でもまさか、10才の甥にクリスマスプレゼントを強請る羽目になるとは思わなかった。
おばちゃんは情けないよ。
「伊都ちゃんにはいつもクリスマスも誕生日もプレゼントもらってるし。あとお年玉も。ママはパパからもらってるけど、伊都ちゃんは誰からももらってないならおれがあげる」
「・・・・・・。よろしくお願いします」
甚だ不本意だけど。
かわいい甥が気を遣ってくれるから有り難く頂こう。
もちろんどんぐりじゃなければ。
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