思い出は胸に痛い

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熱狂的なサポーターたちに混じり私たちも日本代表ユニフォームを着て夢中で応援していると試合時間はあっという間。 試合終了の笛に国立競技場が地鳴りのように揺れる、揺れる。 満員のスタンドの声援の力ってこんなにかと思うほどの歓声に「これはやみつきになるな」と感嘆した。 試合の余韻に浸りながらあたりをみても観客もほとんど席を立つことなく選手インタビューに拍手を送り歓声を上げている。 このあとの表彰式ではスポンサー企業から賞品が提供されるらしくグラウンドではスタッフたちが準備を始めていた。 昴もお目当ての選手がグラウンド上にいるから大型ビジョンを見たりグラウンドを見たりときょろきょろ忙しい。 夢中になっている昴を見るとかわいくて叔母だけど我が子を見るように母性本能をくすぐられてしまう。 うん、うちの甥っ子最高にかわいいぞー。 芝の上にカーペットが敷かれ表彰台のセッティングも終わり、選手たちが整列した。 賞品のパネルを持ったスタッフとスーツ姿の人たちがぞろぞろと登場してやっと表彰式が始まるようだった。 「ねえねえ、みて、みて。あそこに格好いい人がいる」 「え、どこどこ?」 「あそこ、あのスーツのおじさんに混じってるひと」 カッコイイ人がいると聞いたら観てみたくなるのが女のサガってもんだろう。 わたしよりずっと若い女性たちの興奮した声に興味を惹かれわたしもどれどれとグランドを見つめた。 ずらっと並ぶスポンサー企業の偉いおじさんたちの間にひとり若そうな男性の姿がある。 彼女たちの言う通り、すらりと伸びた長い足、身長も頭2つ分ほど周囲より飛び出していて、明らかに一人だけスタイルが違う。 「わ、ホントにイケメンじゃん!」 「でしょ!Jリーガーがかすんじゃいそう」 わたしより視力がいいらしい女子たちはきゃあきゃあと声をあげているのだけど、残念ながら私にはここからじゃ遠すぎて顔の作りまではわからない。 確かに遠目に見ても整っている気がするし、イケメンにありがちな目鼻のバランスのような気がする。 雰囲気は確かにイケメンだけど、本当に顔のつくりがイケメンなのか?雰囲気イケメンなのかはわからない。 ーーーでも、なんだかどっかで見たような気がするのは気のせいだろうか。 いや、まさかね。
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