思い出は胸に痛い

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スタンド席の急な階段を下りて屋内に入ると帰宅する人波でとても混雑していた。 手を繋いで出口を目指したのだけどゲートを出るだけで疲れてしまったわたし。 「きっとメトロの駅も混んでるからもう少し空くまでこの辺を散歩したり休憩してから帰ろうか」 「うん、だったらおれ国立はじめてだからいろいろ見学したい」 「わたしも初めてだから写真撮ろうかな。オリンピックのモニュメントと聖火台もどこかにあったよね、確か」 オリンピックテレビ中継の背後に写っていたオリンピックの五輪マークのモニュメント。 今さらだけど、せっかくだから見てみたい。 「伊都ちゃん、それあっちにあるっぽいっよ」 昴はスマホを見ながら私たちが出入りしたゲートと反対方向を指さした。 「さすがデジタル世代。普段からスマホもタブレットも使いこなしてるだけあってサクサク検索するんだね」 「伊都ちゃんってさ、たまにおばちゃんみたいこと言うよね。それにマップ見ながら歩いても反対方向行くタイプ」 どっちも当たってて否定できないのがまたツライ。 小五の昴からみたら立派な年増だし、血の繋がった叔母だし。 それにマップを見ながら知らない場所に行くと目的地と反対方向に歩いていることもしばしば。 「あのマップってさあ、たまに精度おかしくない?あとさあ、西に何メートルとか言うのもやめて欲しい。西ってどっちよ。そもそも東西南北わかってたら検索しないから。それすらわからないからナビしてもらってるのに」 「方向音痴ひどすぎ。そういやこの間持ってきてくれたケーキ、すっげー美味しかったけど、あれ買いに行くときも迷ったって言ってたもんね」 「うん。テレビで紹介されてどうしても食べたいって思って、スマホのマップ見ながら行ったのに迷った。まったく、もっとわかりやすい地図アプリってないかな」 駅から徒歩6分のはずが反対方向に向かって6分歩いてたから、結局お店にたどり着くのに15分くらいかかり、しかも並んだからめちゃめちゃ疲れた。 「伊都ちゃんのはさ、アプリの問題だけじゃないような気がするけど」 「昴~」 くやしいけど、言い返せない。 もう少し土地勘があるところなら大丈夫だったはずなんだけど。
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