ガーゴイルを探しに

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『ありがとうございます』  自分に向ける、その声。その瞳。  荒んだ彼の人生の中で、彼女と過ごした時間は宝石のようだった。  だが裏の者を使い続ければ、いつかは師長の後を追うことになる。顔も半分焼けて、彼女の知る『ガーゴイル』は死んだ。あの修道院との付き合いもこれまでだ。それでいい。  なのに。  遠ざけようとすればするほど、この女は暗がりへと入って行くではないか。何故だ。「奴は死んだ」と言うと大泣きした挙句、本当に死んだかこの目で確かめると言い出す始末。下手なゴロツキより面倒だ。どうすれば彼女を救える? 『なんだよこの状況はよお……』 「それに…」  修道女は俯いて、赤く染まった顔を隠した。 「私も、あの人に会いたいのです」 「え」 「自分でも何か、わかりません。ずっと忘れられないのです。神の教えより、あの人の瞳が胸を打つのです。この思いがなんなのか、あの人に会って確かめてみたいのです……」  急に足を早めた女に必死でついていきながら、元『ガーゴイル』はもう一度、心の中で絶叫した。 『なんだよこの状況はよお……‼︎』  それはきっと、かつて『ガーゴイル』として生きた頃より、かなり面倒で、少しだけ面白い世界。 (了)
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