ガーゴイルを探しに

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「ほお」  男は、入ってきた女を見てニヤリとした。  山一つ向こうの修道院から、わざわざ裏稼業の自分に会いにやって来るとは。 「尼さんも殺してほしい奴が居るのかい」 「いいえ、人を探しています。『ガーゴイル』と呼ばれる用心棒です」 「ガーゴイル? アンタんとこの修道院に付いてるだろう」  男は笑ったが、女は笑わなかった。 「以前、重要な使いの供として、師長に紹介されました。彼のおかげで度重なる襲撃をかい潜り、無事使命を果たすことが出来ました。お礼をしたいのですが、当時の師長が行方不明になり、連絡の取り方が分かりません」 「そんなことでここに?」 「探したくても情報が少なくて…いつも屋根の上や木の上にいて、あまり姿を見せませんでした」 「ああ。だから奴はガーゴイルと呼ばれていた」 「でも雨の日、私にマントをかけてくれたことがあります。フード越しに見えた横顔…プラチナブロンドの髪と青い瞳。私が知ってるのはそれだけです。あちこち探しましたが、見つかりません」  俯く修道女に、男は一層笑った。さて、この箱入り娘から何をどれだけ搾り取ろうか。 「ガーゴイルか…シマは違うが、知らんこともない。俺たちの中じゃ有名人だったからな」 「だった……?」 「ああ、アイツは」  言いかけて男はギクリとした。女の後ろに誰かいる。裏に生き続ける男が、今の今まで気づかなかったことに狼狽した。何者だ⁈
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