ガーゴイルを探しに

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 なんだよこの状況はよお。  元『ガーゴイル』は苦悩していた。  師長から用心棒の依頼があった時、書簡もろとも始末しろ、という依頼も別口から来た。修道院より払いが良かった。  標的は、屋根の上にいる自分に笑って手を振り、しょっちゅう掏摸にあい、雨の中も頑張って歩き、闇に紛れて襲うゴロつきを懲らしめると律儀に礼を言う、真面目で能天気な女。よくこんな歳まで生きられたものだ。  だが女を見ていると、自分の生きた世界が酷くつまらなく感じた。神の加護があれば、抗うことも出来るのだろうか。余計なことを考えた。  顔と片足を引き換えに、安い方を選んだ。  師長までは救えなかった。だが、あの女がどこかで生きていれば、きっと少しはマシな世界になるだろう。  右眼はもう開かない。足も治りきらず、裏の仕事が難しくなった。  酒場で下働きをしていたら、あの女が来た。完全に油断していた。  いきなり抱きつかれて、酒樽ごとひっくり返った。 「もう諦めたらどうだ」  提案したが、断られた。 「命を救われた恩には、報いるべきです」 「……腕の立つ用心棒ほどロクデナシだ。手を差し伸べる価値なんかありゃしないぜ」 「あら、貴方は真っ当で強い用心棒ではないですか。それに、善行が報われないのなら、悔い改める意味は何処にあるのですか」  半分焼けた顔に怯えもせず、まっすぐ見つめてくる小鹿色の瞳。彼は、無表情を保つのがやっとだった。 「それでは誰にも救いがなくなります」 「だからって、ちょっとイイことするだけでチャラになってたら、正しく生きるのが馬鹿らしいだろ」 「全てが赦されなくとも、善行に見合った御礼は受けていいのではないでしょうか」 「それはもうもらってる」 「え?」 「何でもねえ」
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