序章

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「皆様、群青学園高等部へのご入学、おめでとうございます」  桜が満開に咲いた山中。  山奥に佇む巨大な敷地を有する群青学園は、高等部の入学式を迎えていた。新1年生の約100名と、その背後にいる倍の保護者と在校生が集められた巨大な講堂に、1人の青年の声が響く。  この学園の最高権力を持つ組織の一つ、生徒会の副会長が司会進行役として台本片手にマイクの前に立った。サラリとした肩ほどの黒髪に、朱い瞳を細めた副会長――如月(きさらぎ)理叶(リト)は、普段の黄色い声の代わりに目を煌めかせた生徒たちににっこりと微笑んだ。 「まず初めに――――」  群青学園。  日本の山奥に(そび)える何棟もの建物は全て学園の所有物である。今回の舞台は高等部だが、別の敷地には幼稚舎から大学まであり、初等部から高等部までは男子校と女子校に分かれている。  群青学園は入学基準が極端で、基本的に有名企業や古くから続く家系などの所謂上流階級に属する子ども、もしくは非常に優秀な一般家庭の生徒しか通れないと言われている。そのため、群青学園自体豪華な造りとなっており、その豪華さに一般家庭出身の生徒はしり込みしてしまうほど。  また、群青学園自体に不思議な伝統が数多く残っている。  その1つは、生徒会役員と各委員長を決定する際のである。これはただの人気投票ではなく、生徒たちから『抱かれたいランキング』と『抱きたいランキング』を募ることを指している。  もう一度記すが、群青学園の初等部から高等部は男子校と女子校に分かれている。  これが示すことは、群青学園には同性愛者が多く存在するということである。新聞部の情報によると、学園全体の約8割が同性愛者であるとの結果が出ているそうな。  そして、思春期真っ只中の生徒たちによる『抱かれたいランキング』『抱きたいランキング』は必然的に見目が良いものが選ばれる傾向にある。そして、元々上流階級の優秀な遺伝子が混ざりあった結果、ランキング上位者にあたる生徒会役員や各委員長は特に容姿とスペックが整っている。  その他にも、学園の森には身を清めるための泉があるだとか、開かずの洋館があるだとか、代々生徒会長と風紀委員長は犬猿の仲だとか、数十年に1回厄介な転校生が来るだとか、様々な噂と伝説が残っている。
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