序章

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新入生A side   *   *   *  サラリと揺れる黒髪に朱色の瞳を持つ美人が講堂のステージに立つと、周囲のボルテージが一気に上昇した。  それもそのはず、生徒会は生徒の中から人気投票で選ばれた顔面と家柄のいい生徒で構成されているから、まさにアイドルのような扱いだ。  なんて冷静に語ってはいるが、オレもその投票に参加している。中等部から採用されている投票形式は、人気者をアイドルとして崇めるためのシステムとして構築されている。  そして、ステージ上にいらっしゃる副会長により、始業式が始まった。開会の挨拶から学園長の挨拶、表彰までサラリと流れていく。  そして、最後に待ちに待った各委員会の代表の方々のご挨拶だ。初めに紹介されるのは既に引き継ぎも終わっている委員会の皆様。7つの委員会と生徒会によって動いているこの学園において、彼らは理事会からも、教師からも信頼されている。 「体育委員長、鷹司 蘭丸」 「おう!」  名前を呼ばれると同時に講堂内が震えるほどの大きな声で返事をしたのは、体育委員長の鷹司様。  遠目からでもハッキリと分かる赤髪に赤い瞳は、彼自身の強さをよく表している。空手部の部長さんでもあり、試合になるとそれはそれは恐ろしいらしい。力強い鷹司様は、小さいチワワ(比喩)や体育会系男子を中心に人気を集めている。 「美化委員長、九十九 夕鶴」 「はい」  鷹司様とは一変して物静かにステージ上に上がってきたのは九十九様。  艶やかな紺の髪に藍色の瞳を持つ九十九様は、汚らわしいものに対して嫌悪の感情を隠そうともしない。そして、その様子は一定数のドMに刺さるらしく、女王様のような扱いを受けている。 「図書委員長、縣 八雲」 「っ!は、はい!」  緊張しまくっているのだろう、噛んだことを恥じらうように頬を赤く染めたまま出てきたのは、縣さま。  可愛らしい輪郭に、クルンとした黒髪、そして丸メガネの奥にある優しい緑の瞳が、人前に出たことで小刻みに揺れている。そう、縣さまは極度の人見知りかつあがり症なのだ。  それでも目立つ委員長の座に着いたのは、本が大好きであるかららしい。 「放送委員長、風早旭海」 「はーい!」  ぴょん!と効果音がつきそうなほど軽やかにステージ上に出てきたのは風早様。  海のような青い髪と瞳をもつ風早様は、誰がなんと言おうと元気な柴犬である。気に入った人にはぴょんぴょんとついて行き、またそれが許されるほどの愛嬌がある。  なんて言っている間に、あんなに人見知りを発動していた縣さまでさえ、ぴょんぴょんと近づいてきた風早様にニコニコと笑っていらっしゃる。  ――はぁ、尊い 「広報委員長、猫屋敷 誉」 「ほーい」  次に軽快な返事とともにひょろりひょろりとステージ上に歩いてきた(?)のは猫屋敷様。  10人中9人は変人と答える、まさに変人である。あと1人?それは美人って答えるな。  何せ猫屋敷様は隔世遺伝らしい金髪に金色の瞳を持つ王子様である。彼自身の変人さも相まってなかなかに強烈な印象を植え付けられる。  ただ、広報委員長をしているだけあって「この人ある所にネタあり」と言われるほどの面白い物好きでもある。 「学級委員会会長、小田切 壮士」 「はい」  厳格そうな声と共にステージ上に現れたのは小田切様。  茶髪に夕日色の瞳を持つ、努力型の秀才である。当たり前のごとく顔がいいのは置いておくとして、学級委員長をまとめる役割を持つ小田切様は、生徒だけではなく教師陣からの人望も厚い方である。  よく放課後も教室や図書館にいる姿を見かける。
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