第2章 崩落と柱

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*   *   *      ホテルは基本的に2人1組で組んである。生徒たちが楽しそうに2人組で入っていくのを見ながら、怪しい組はいないか慎重に見分ける。2人1組にした理由は警備上、1人がいなくなったらもう片方が通報できるため。あとは単純に1人よりも2人の方が楽しいだろうという気持ちだ。ちなみにペアを組んでくれたのは水埜だ。    ロビーの隅で生徒たちを観察していると、後ろから小戸森双子が奇襲をしかけてきた。グイッと腕が引っ張られる。   「「いーおり!!」」 「ぉっと」 「やぁっと捕まえたー!」 「このまま逃げられるんじゃないかと思ったー!」    ぷすっとリスのように頬をふくらませた小戸森は、そのままぐんぐんとエレベーターまで突き進んでいく。   「ちゃんと行くつもりだったよ〜?」 「部屋どこか分かってるの?」 「如月の説明聞いてなかったじゃん!」 「知ってるよぉ、最上階でしょ〜」 「「むむむむむむむ」」    エレベーターに乗って小戸森が階数を押す前に最上階のボタンを押す。すると、不満だったのか両隣から頭をグリグリと押し付けられた。地味に痛い。  お揃いの青空のような髪に、同じように白いヘアピンを付けた姿は瓜二つ。見分け方は海の底にいるかのような瞳がつり目か若干柔らかめかと、本人の性格。今も、弟よりも甘えん坊な兄の方が、腕を掴んでいる力が強い。   「大丈夫だよ、どこにも行かないって」 「信じない」 「信じない!」 「あれま」    あっという間に最上階についた。  扉が開いた瞬間からそこは玄関口で、高級なカーペットが敷かれている。そして、入口の向かって右手には如月家の執事が佇んでいた。   「いらっしゃいませ、八千代唯織さま」 「こんにちは〜」 「おかえりなさいませ、小戸森颯さま、慎さま」 「「ただいまー!!」」  余程楽しみなのか、バタバタと駆けて行った小戸森の後ろをゆったりとついて行く。窓は全面ガラス張りで、遠くの景色まで見渡すことが出来るようになっている。白い廊下を突き進んでいくと、話し声がする部屋が1つ。ドアを開くと、大きなテーブルを挟んだソファーに座る小戸森たちがいた。   「おい、遅いぞ」 「はいはい、やる事やってたの〜」 「あ?どこのヤツ引っ掛けたんだ」 「仕事してた〜」 「唯織!荷物置いた?」 「ディナー行こ!」 「した、で食べよ……」    小戸森双子の後ろから杠葉も付いてきた。夕飯が楽しみなのか後ろにパタパタとしっぽが振られている。如月はどこか気まずそうに杠葉の後ろに隠れている。   「いいよ、みんなが集まる前に行こうか」 「「やったー!!」」 「い、おりと、ご飯!」 「ディナーは1つ下の階ですね」 「行くぞ、お前ら」     動きの早い獅子王の後ろをぴょんぴょんと小戸森たちが唯織の腕を掴み直して追いかけていく。少し小走りになりながらも、またエレベーターに乗って下の階に降りた。
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