序章

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「続いて、風紀委員会委員長、水埜 尋」 「あぁ」  腰に響く声を講堂に響かせ、コツコツと(絶対に高級品な)ローファーを鳴らしてステージ上に現れたのは、風紀委員長の水埜様。  短く切られた黒髪に怪しく細められたアメジストの瞳、そして少しも動かない表情筋。……まさに巷で言われているように魔王様のよう。  学園内では生徒会に並ぶ二大権力組織の1つ、風紀委員会を治める水埜様は家柄も容姿も人望も全てを持っている。  しかし、かの投票では僅差で2位という結果。一説によると、水埜様の無表情が原因だろうと言われている。  余談ではあるが、委員会は全部で7つある。そして今期の代表の方の瞳の色を見ると七色の虹のようであることから七虹(ナナコウ)と囁かれていたりする。 「風紀委員会副委員長、蓮見凛ノ介」 「はい」  委員長とは正反対の明るいイメージを撒きながらステージ上をステップしているのは蓮見様。  茶髪に茶色の瞳を持つ蓮見様は、水埜様の忠実な犬であり、これまたイケメンである。  風紀委員会だけが副委員長まで紹介されているのは、基本的に表に出て処理をするのが蓮見様だから。  「よろしくねー!」と一般生徒に手を振る蓮見様とサッサと椅子に座った水埜様は委員長と副委員長で凸凹が綺麗に噛み合わさっている。 「以上、全委員会の代表者をご紹介させていただきました」  放送委員会の声で一斉に立ち上がり、一礼する委員長・副委員長方(アイドル)はとてつもない迫力だ。例年通り、各委員長は3年生が務め、風紀副委員長は2年生が務めている。  ちなみにさっきから排除しているが、周囲からは黄土色の歓声が沸き起こっている。チワワや屈強な男たち、平均して顔も育ちもいい面々が集まっているためか、なかなかに様になっているのが萌え……いや、面白い。  ゆったりとした一礼の後に、ステージ上に設置された椅子に座った各委員長様方を確認した放送委員がマイクのスイッチを押した。  一般生徒の視線は舞台袖に、各委員長さまたちの視線は一般生徒に止められる。  最高潮にボルテージが上がったところで、役員紹介は大トリに進む。
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