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お風呂から出て賑やかな部屋に戻る。どうやらカードゲームをしていたらしく、小戸森たちのキャーキャーという楽しそうな声が響き、大きなテーブルには無くなったお菓子の代わりにUNOやトランプが乱雑に置かれていた。
説明を続ける如月と訳が分からないという顔をしている獅子王に近づく。傍にはUNOの手札を持って楽しそうに見守っている杠葉と「早く」と急かす小戸森双子がいる。
「だから、同じ数字と色が場のカードと同じときは出せるんですよ」
「あ?これは?」
「いいねぇ、でも1枚ずつしか出せないよ〜」
「おわ、帰ってきたのか」
獅子王の手札を後ろから覗き込み、獅子王が如月に手札を見せようとしていたのを止めて、手札のうち1枚をピンッと人差し指で揺らした。
余程楽しんでいたのか唯織が帰ってきたことに、獅子王は肩を揺らして驚いた。素直に揺らしたカードを出す獅子王に、そうそうと相槌をうつ。
獅子王の後ろから移動して空いていた左横の席に座った。
「お前もこのゲームを知ってるのか」
「知ってるよぉ。俺の周りにUNO好きな人がいたんだよね〜」
「それは初めて聞いたな」
「そうだっけ〜?」
「そうそう!」
「イオリ話してくれないんだもん!」
「確かに、あなたは特に秘密が多いですね」
「誰しもが秘密なんて持ってるんじゃないの?」
「イオ、ひみつ、しゅぎ……」
色とりどりのUNOがヒラヒラと置かれていくのを見ながら目を細める。
八千代唯織にとって、知られてはならない秘密は山ほど存在する。
例えば、八千代家は獅子王のお家事情から繋がり、歴史とこれからを全て調査していること。何千に止まらず、何万にまで至る各家の深淵にまで迫った情報は絶対に知られてはならないトップシークレットの1つ。
他にも、“八千代唯織”が〖日生〗であるということ。
〖日生〗さえ完全に手の内に入れてしまえば、その家は森羅万象から庇護され、これからが保障されるのだ。黒羽根のように〖日生〗を狙うものはますます増えるだろう。
つまりは、ここは話を変えるに限る。
唯織は完璧な微笑みを顔に乗せ、トン、とUNOをカードの山から7枚取って、手札の中からポンと中央に置かれたカードに乗せた。
「俺からしたら如月たちが転校生くんに入れ込んでる意味の方が知りたいなぁ。どこを気に入ったの?」
「フン、オレはあの生意気さだな。このオレに向かってあんなことを言うやつはいない」
「ふぅん?」
2周目、手札の中からワイルドドロー4を中央に置く。右隣から舌打ちが聞こえてきた。
「……私は何でも一緒にしようと言ってくれるところですね。置いていかれることはありませんし勝手に独りぼっちになることもありません」
「一緒、に、ご、はん……お、いし」
3周目、同色のカードをおく。右隣はカードを持っていなかったようで山から1枚引いて置いた。
「「ボクたちはねー!」」
「一緒に遊んでくれるの!」
「一緒にイタズラしてくれるの!」
「この間は一緒に追いかけっこしたんだよ!」
「「楽しかったー!!」」
「「でもねー?」」
「誰かさんは一緒に遊んでくれない」
「誰かさんは一緒にイタズラしてくれない」
「ずっと遠くで見てるの」
「「寂しいよ、だからずっとユウマくんと一緒にいるのー!!」」
4周目、同じ4の数字のカードを出す。右隣は舌打ちをして山からカードを引いて、2回目で出たカードを置いた。
小戸森たちの口から語られた理由に、カードの山から視線を逸らしてみんなの顔を見渡す。
すると、みんながこちらを見ていたようで目が合う。寂しいと訴える顔、どうしてと責める顔、不満そうな顔。
どれも、ここ数年で〖日生〗として見てきた顔だった。
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