第2章 崩落と柱

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 基本的に人がいる場所では寝ることが出来ない。  一応、気絶という手段で眠ることは出来る。  例えば、新歓の準備中、水埜の前では疲労困憊だったこともあり気絶して眠ってしまった。でも、今は眠気はなく、更に今は転校生くんが黒羽根と関わっていると分かったことで余計緊張の糸が緩めなくなってしまった。  1度ソファーから立ち上がって、部屋の電気を全て消して小さなランプだけ灯す。ボンヤリとした明かりの中、少し前にも取り出した私用のスマホを取り出した。  開くのは黒羽根によって犠牲になった子どもたちの情報。一人一人に名前があって、人生があったはずの生命は既に身勝手な黒羽根(オトナ)と唯織のせいで消えてしまった。  だから、せめて彼らを脳裏に刻み込む。彼らが生きた証を記憶し、その最期を想像する。  ニンゲンが、その範疇から出ることは出来ない。  ニンゲンはニンゲンらしく、男女の交わりによって種が形成され、母体から産まれ、“人生”を生き、死ぬ運命なのだ。  決して、神になろうだなんて考えてはいけない。  は酷い痛みを伴う。    ニンゲンには処理ができない知識に脳が破裂してしまうだろう。  ニンゲンには出来ない動きに筋肉が裂け、骨が折れるだろう。  ニンゲンには見えない世界に処理が間に合わず目玉がくり抜かれるだろう。  ニンゲンには制御しきれないココロに“心”が死んでしまうだろう。  痛い、と叫び声も上げられず、死んでいった幼い生命。  全て、〖日生〗が存在するから生まれた悲劇(現実)。  彼らの御霊が辿る次の生命が幸福であることを祈ろう。  〖日生〗の手が届かず、零れ落ちた生命に唯織ができることはこれくらいしかないのだから。   
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