迷子

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「みっくん、お兄ちゃんとお留守番してなさいって言ってるでしょ!」 買い物に出かけようとすると、二歳のみっくんが玄関までついて来る。 「やー、ママ!」 みっくんがいつものように駄々をこねる。 勘弁して欲しい。朝も昼も夜も付きまとわれてうんざり。トイレにもゆっくり行けない。 お兄ちゃんのかずまはここまで後追いは酷くなかった。ベビーカーにみっくんを乗せて買い物に行くのは疲れる。みっくんは活発で大人しくベビーカーに乗っていてくれない。夕飯の材料もないし、みっくんのオムツもないから買い物に行かなきゃいけない。 「かずまー! みっくん見ててって言ったでしょ。お母さん、すぐ帰ってくるからお願いよ」 奥のリビングにいる6歳のかずまに声をかけると、ゲーム機を持ったままこっちに来た。 「みっくんとゲームでもしててよ。ねえ、お願い。すぐ帰ってくるから」 「うん」 かずまが頷く。 みっくんを抱き上げて、かずまと一緒にリビングに行く。テレビ画面にはみっくんも好きなゲームを映す。みっくんがテレビの前に腰を下ろし、かずまとゲームを始める。 出掛けるなら今だ。 みっくんに気づかれないようにそっとリビングを出て、エコバッグを掴み家を出る。玄関の鍵をかけておけば外に出る事はない。 車で近所のスーパーに行く。大急ぎで買い物をして、30分で家に帰って来た。 「ただいま」 リビングに行くとかずまが一人でゲームをしていた。 「みっくんは?」 「2階」 かずまがテレビ画面を見たまま答える。 二階で遊んでいるなら都合がいい。みっくんに付きまとわれない内に夕飯を作ろう。 三十分後、みっくんとかずまが好きなミートソースが完成。今日は邪魔が入らなかったからスムーズに料理出来た。あとはパスタを茹でるだけ。そう思った時、家が揺れた。地震だ。 「お母さん」 リビングにいたかずまがキッチンに飛んでくる。 地震はすぐに止まる。多分、震度3ぐらい。 「大丈夫よ」 あれ? みっくんが降りて来ない。絶対、びっくりして私の所に来るはずなのに。 「かずま、みっくんはまだ二階?」 「……多分」 かずまが急に怯えたような顔をする。 嫌な予感がする。まさか、みっくんが二階にいるって適当な事を言ったんじゃ……。
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