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「──おい。おまえら家に帰らないでまっすぐ来てるだろ?」  ある日、僕と真菜が駄菓子屋から出たところで急に声をかけられた。振り返ると僕のクラスの奴らだった。身体が大きくて、しかもそいつの父さんが学校の偉い役員をやってるとかで威張り散らしているゴリ男とその仲間たちだった。僕がひとりだけクラスの係をやってないことも面白くなかったようで、ずっと文句を言っててゴリラ担任に注意されていた。それもあって僕に対するあたりが強かった。  僕はどうしてよりによって奴らに会ったのかと心の中で舌打ちした。 「それって禁止されてるだろ」ゴリ男の隣にいる猿みたいな取り巻きが声をあげた。ゴリ男のそばにいれば何か言われることもなく守ってもらえる。それもあっていつも何人かの取り巻きがいる。この猿に似た奴を僕は密かにモンキーと呼んでいる。モンキーがそう言うと反対側に立っていた顔の長いちょっととぼけたヒョロ長い奴が「そうだそうだ」と合いの手を入れた。僕はそいつをナスビと呼んでいる。いつもはこの三人にあと二人くらい加わってゴリ男軍団なのだが、あとの二人はどうやら家の方向が違うらしい。  真菜は怖がって僕の後ろに隠れた。僕は相手にする気はなかった。だから無視して立ち去ろうとした。 「待てよ」ゴリ男が怖い声を出した。だけど待てと言われて待つ馬鹿はいない。  足を止めなかった僕の肩をゴリ男が掴んで僕を強引に止めた。僕は仕方なく振り返った。 「規則違反だろ」ゴリ男はたまに難しい言葉を使う。それがカッコいいと思ってるみたいだった。  僕は何も答えずにただゴリ男を睨みつけた。真菜のことをゴリ男に知られたくなかったし、何より父さんに真菜を守るって約束したんだ。 「聞いてンのかよ!」モンキーは僕の肩を小突いた。身体は揺れたけれど全然痛くなかった。 僕はやっぱり何も答えずにただ睨みつけた。 「生意気だな」ゴリ男は僕を思いっきり突き飛ばした。そのまま足がふらついた。すぐにナスビが足を引っ掛けてきた。僕は尻餅をついた。三人はそれがおかしかったのか急に笑い出した。僕はそれにムカついてゴリ男の腹に向かってタックルをかました。ゴリ男はバランスを崩したらすぐに立て直した。そして僕の顔に張り手をかました。一瞬怯んだけれどすぐに僕はゴリ男のあごに頭突きをかました。ゴリ男は「痛え!」と声をあげた。するとすぐにモンキーが僕の肩を掴んでナスビが僕の向こう脛を蹴った。痛ッ!  すると急に「あー!」と声が聞こえた。駄菓子屋にやって来たクラスの女の子たちだった。ゴリ男たちは一瞬そっちに気を取られた。その隙に僕は立ち上がり、真菜の手を取って走り出した。
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