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**  どうやら他の近所の人が消防車を呼んだようだった。そして救急車もやって来た。最後にはパトカーもやって来た。男は殴られて気絶しただけで命に別状はないようだった。それでも一応救急車に乗せられて行った。 「だから変態がね!」事情を聞かれている消化器でぶん殴ったおばさんが興奮冷めらやぬ様子で喚いていた。 「いや、変態っていうか変質者ですよね」 「だから変態よ!」  警察の人も困った様子だった。どうやら真菜が大泣きしていたので女の子にイタズラしたと勘違いしていたようだった。  僕は救急隊の人に呼ばれて病院に行こうと言われた。でも真菜を置いて行くわけにはいかない。僕は首を振った。ゴリ男たちは警察の人に囲まれていた。救急隊の人に連絡先を聞かれたので僕は家の電話番号を伝えた。今日は父さんか母さんは居ただろうか。 「痛いでしょう?」救急隊の人は僕の顔を覗き込んでそう言った。確かに痛いけど僕はそれどころじゃなかった。あいつは殴られたけれど駄菓子屋で万引きした悪い奴だ。捕まえてくれないと困る。真菜はどこだろうか。ゴリ男の弟と一緒にいてくれてるだろうか。人でごった返す中、僕は真菜を探した。はぐれてしまっていたらどうしよう。それにこんなに知らない人がいて怖がってないだろうか。 「お兄ちゃん!」声が聞こえた。目を向けると真菜とゴリ男の弟が駄菓子屋のお婆さんと手を繋いでこちらに手を振っていた。僕は身体から力が抜ける感じがして座り込みそうになった。 「陸!」  支えてくれたのは父さんだった。僕はそのまま父さんに身体を預けた。  僕たちは念の為に病院に連れて行かれた。僕は仕方ないけどそれぞれもどこかは打っていたわけだから連れて来られたというわけだ。警察の人は二人が僕たちについていた。どうやら駄菓子屋で万引きしていた奴は無事に捕まった。万引きもそうだがどうやらこのへんで起きている小さな子への猥褻事件で警察が追っていた奴だったらしい。あのおばさんの〈変態〉はあながち外れてなかったわけだ。  親が呼ばれて何故か学校の先生達もやって来た。そこで僕たちは褒められるどころかめちゃくちゃ叱られた。 「二人で何かしてるのは知っていたが」と父さんにはずっと小言を言われた。ゴリ男の家族は平謝りで、頭をあげてくれというのにずっと謝っていて母さんが困っていた。  ナスビとモンキーの親は普通に心配してた。モヒカンのお父さんは本当にソフトモヒカンにしていた。一番びっくりしたのがエリアシのお母さんで長い髪はド金髪だったし、ついでにめちゃくちゃ怒ってエリアシはタコ殴りにされていた。怒ると怖い系のお母さんだ。
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