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 慌てて店内に入ると真菜とゴリ男の弟がレジの机のところで糸付きフルーツ飴を引いているところだった。ちょうど店内から小学生の女子二人が出て行くところだった。真菜は話せないのでゴリ男の弟が糸を選んであげているところだった。奥には制服を着た男が一人いた。背はゴリ男と同じくらいだったが、ゴリ男のほうが体重があって強そうだった。僕たちはガムやうまい棒を選んでるふりをした。  制服の男はこちらに警戒しながら〈酢蛸さん太郎〉をひと掴みポケットに入れた。そしてすぐに〈蒲焼さん太郎〉をごっそり掴むと反対側のポケットに入れた。そして〈タラタラしてんじゃね〜よ〉は容器ごと持っていた鞄の中に入れた。それだけじゃなく〈キャベツ太郎〉や〈クッピーラムネ〉や〈フエラムネ〉もごっそり鞄の中に入れていた。だめ押しに〈ブタメン〉も鞄の中に入れていた。その手際は鮮やかだった。三分とかかってないだろう。 「──見たな?」ゴリ男が僕の耳元で囁いた。僕はしっかり頷いた。 「店を一歩でも出たら取り押さえるぞ」  僕はゴリ男の言葉に緊張した。まさか『万引きしましたよね』って声をかけるわけじゃないだろう。逃げられたら困る、すぐに取り押さえないと。店の出入り口にはモンキーとナスビとエリアシとモヒカンがそっと店内を覗いていた。ゴリ男が頷くと四人は揃って頷いた。何か通じ合ってるのだろうか。  レジでは真菜が大きなフルーツ飴が当たったと喜んでいる声が聞こえた。制服の男はその隙にそっと店の外へ出た。僕たちはすぐに追って外へ出た。 「待ちやがれッ!」  ゴリ男がいきなり叫ぶと四人はその男を取り囲んだ。 「な、なにをするんだ」男はさして大きくない声でそう言った。 「店の物を盗んだろ! 見てたぞ!」ゴリ男がそう言うと男は舌打ちをして逃げようとナスビをいきなり突き飛ばした。エリアシはその脚にしがみつこうとして蹴られ、その隙にモヒカンが男の前に立った。後ろからゴリ男が男のタックルした。男は鞄でモヒカンを殴り、ゴリ男のタックルをもろに食らっていた。  男はよろけて膝をついた。ゴリ男は男の身体を押さえつけようとした。だが男はポケットに手を突っ込んだ。僕は走り出してゴリ男を突き飛ばした。その時に少し遅れた。そのせいでナイフが僕の腕を掠めた。少し痛かった。 ナイフを見てゴリ男もモヒカンも距離を取らざるを得なかった。僕の腕からは血が流れていた。  後ろから声がした。真菜だった。ダメだ、こっちに来ちゃ! 僕がそう叫ぼうとした。だが真菜は僕の腕に気がついてしまった。  真菜の瞳からぼろぼろと涙が溢れた。 「か……」真菜が口を開いた。 「火事だああああーーーーーー!!」  それは驚くほど大きな声だった。ナイフを持った男もびくりと身体を震わせていた。それを見たエリアシが男の脚をいきなり蹴りつけた。男はふらついたが転ぶことはなかった。  男の背後で叫び声が聞こえた。消化器を抱えたいつも窓越しでこちらを伺っていたおばさんだった。 「へへへ変態がーーー!!」おばさんは手に持っていた消化器を振り上げると、いきなり男の頭をぶん殴った。すごい音がした。男はよろよろとしながら仰向けに倒れ込んだ。そしてそのまま動かなくなった。遠くでサイレンの音が聞こえた。
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