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「おまえら……」やって来たのはゴリラ担任だった。どうやら警察から連絡が入って事情は全部聞いたらしい。見たことのないような真顔でやって来た。そして僕たちに一列に並べと言った。 「すみません! これから体罰を行います!」ゴリラ担任は親達に一礼した。後ろには真菜の担任も来ていた。真菜の担任は慌てて止めようとしていたが、ゴリ男のじいちゃんに止められていた。エリアシの母さんは「やっちゃえやっちゃえ」と腕を振りあげていた。  ゴンッゴンッと音が鳴り響いた。それは僕の頭にも直撃した。ゴリラ担任が素早い動きでみんなに一発ずつゲンコツを食らわせたのだ。痛えっ! 僕は頭を押さえた。みんなそうしてた。 「犯人はナイフを持っていたそうじゃないか。どうして大人を呼ばなかった!」ゴリラ担任はめちゃくちゃ怒っていた。「自分のしたことを反省しろ!」  それにはゴリ男が噛みついた。「別に悪いことはしてないじゃないですか! ただの私人逮捕です。悪い奴がいたら捕まえるのは当たり前でしょ?」 「それは大人の話だし、わざわざ狙って捕まえるなんて言語道断! そういう時は周りの大人に相談するものだ」  ゴリラ担任は鼻息荒く説教を始めた。 「だいたい子どもが大人を捕まえようなんてするもんじゃない」 「それはたまたまで、向こうは中学生の制服を着てました」 「じゃあお前の話を百歩譲って聞いてやろう。だが下手すれば仲間が死んでたかもしれないんだぞ? 突き飛ばされて転んだ時にたまたま打ち所が悪くて死んじまうことだってある。現に陸はナイフで切られただろ? もしもっとよく切れるナイフで半袖だったら陸の左手は二度と使えなくなったかもしれないんだ。それでもお前はいいことをしたと思うのか?」  ゴリラ担任はそう諭すように告げた。それにはゴリ男も黙るしかなかった。 「これからは何かあったら大人を呼ぶ。分かったな?」  僕たちは「はい」と答えるしかなかった。  ゴリ男は僕のところに来て「ごめん」と小さな声で謝った。僕は何か言おうとしたけれど、すぐにじいさんに首根っこを掴まれて引き摺られて行った。  真菜は女の担任の先生と話をしていた。小さな声だったけれど話ができることに驚いた。担任は真菜の目線に合わせるように膝をつき、何度も頷いて真菜の話を一生懸命聞いていた。そういえば真菜は僕を呼んでいた。もしかしたら少しずつだけど話せるようになったのかもしれない。 「──陸」父さんは僕の肩を掴んだ。「本当は褒めてあげたいところだけどね。でもやっぱり褒めないことにするよ」  それは仕方ないことだと思う。少なくともゴリラ担任の言ってることは間違ってはいない。もし誰かが死んじゃったりしたらと思うとゾワゾワしてくる。 「何かあったら父さんに相談しなさい。約束して」  僕は頷いた。
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