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それから僕たちは何日も何日も〈ハリコミ〉をした。真菜はすぐ飽きるかなと思ったけどゴリ男の弟が遊んでくれるのが楽しかったらしく、毎日ついて来るのをやめなかった。今日も『クリスマスにサンタさんに何をお願いする?』なんて言ってる。クリスマスって願い事をする日だったっけ?
僕は少し飽きてきてはいたけれど駄菓子屋がなくなるのは困る。けど本当に犯人は現れるのかだんだん自信がなくなってきていた。もしかしたら犯人は忙しくて万引きを休んでるのかもしれない。そうだとすると僕たちは冬休みまで棒に振ることになる。僕はゴリ男をチラリとみた。ゴリ男は何故か〈しじんたいほ〉に憧れているようで、熱意は失われていないようだった。
巡回に行っていたナスビと変な顔をしたモヒカンが早足で帰ってきた。僕たちはその姿を見て急に緊張感が増した。
「──見たのか?」ゴリ男が低い声で聞いた。ナスビは首を振った。そうか、とゴリ男は残念そうに呟いた。僕はずっと変な顔をしているモヒカンに声をかけた。
「どうしたの?」
モヒカンはすぐには答えなかった。僕は待った。モヒカンが大事なことに気がついてる気がしたからだ。
「こないだなんか変だって言っただろ?」
モヒカンの言葉に僕は頷いた。
「あれ、家に帰って思い出したんだ。この辺って北中か今里中だろ?」
僕はよくは知らないけれどこの辺の学区は北中学校だった。ただ隣の今里中学校もそう遠くないので、このへんまで来ることはよくあることだった。
「今里中の制服はずっと前からブレザーだったし、北中もそうだった。けどおれの兄ちゃんが卒業する年から何故か学ランになったんだ」
確かにそうだ。学ランを見て父さんが驚いていた。どうやら体操服のジャージがめっちゃかっこよくて、みんなそればかり着ていて制服は行事のある時しか着ないらしい。それにどうやらブレザーだと高校生のふりをして大きな街に出かけて行く生徒がいたから変更になったらしい。
「──それなのに北中の昔のブレザーを着てる人がいる」
僕もゴリ男も驚いた。
「ブレザーなんてどこもそんなに違わないだろ。もしかして今里中じゃないのか?」ゴリ男が早口で言った。
「間違いない。兄ちゃんがずっと中学のブレザーを出しっぱなしで母ちゃんに怒られてるくらいだから。それにこないだ見てから兄ちゃんの部屋で確認してきた。昔の北中はズボンがチェック柄なんだ。今里中はグレーの無地」
僕とゴリ男は顔を見合わせた。
「もしかして学生のふりをして駄菓子屋に来て万引きしてる?」僕がそう言うとゴリ男は頷いた。
「そうじゃなきゃ昔の制服を着て駄菓子屋に来るなんてことはしないはずだ!」
たまたま駄菓子屋の店内には真菜とゴリ男の弟がいた。僕たちは駆け出した。
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