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大学のほど近くに、安い部屋を借りた。学校はオリエンテーションが終わったばかりで、まだ本格的な授業は始まっていない。通学路の途中にある川原で咲き誇る桜を眺めながら、狭いワンルームに辿り着く。
ただいま、と誰もいない部屋に声をかけて上がり、部屋に鞄を下ろす。空気を入れ替えようと窓を開け、ベランダに出た。
ポケットで軽快な通知音が鳴り、僕はスマホを取り出す。ついさっき会ったばかりの葉月からメッセージが届いていた。
僕らは、同じ大学に進学した。葉月は高校こそ中退してしまったものの、自力で勉強をして大学に合格した。それで静養になっているのかと、僕は心配したものだ。
学部は違えど、今日は一緒に学食で昼食を摂り、たわいの無い話をした。デザートのプリンを幸せそうに口に運ぶ葉月は、いつまでも見ていたい笑顔を湛えていた。
明日も一緒にお昼を食べよう。数度やり取りをして、僕らは同じ言葉を打ち込む。
また明日。
送信ボタンに触れた時、穏やかな風が吹いて、僕は空を見上げた。
どこからともなく流れてきた桜の花びらが、風に吹かれてくるくると楽しそうに回っていた。
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