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答えをなあなあにしたまま店を出て、僕たちはデートを続けた。葉月も、僕の言ったことをどう受け止めていいかわからないようで、いつもより更に明るい笑顔で僕を励ましてくれた。言わなきゃよかったと僕は後悔しながら、申し訳ない気持ちを抱えて彼女について歩いた。
「じゃあ、佑二にとっては三回目ってこと?」
午後六時、駅前の広場で突然葉月が言う。
「もう何度も私と別れてるってことだよね」
僕は返事ができなかった。実際、僕は葉月に二回さよならをした。そして今日で三回目。明日は四回目を迎えるのかもしれない。
「三度目の正直っていうでしょ。もしそんなことがあっても、きっとこれで最後だよ」
駅から漏れる光で、彼女の瞳がきらきらと輝いている。それを見て、最後まで彼女に気を遣わせる自分が情けなくて堪らなくなる。
「少なくとも、私は初めてだから」
にっこり笑う彼女の名前を、僕は呼んだ。そうなんだろうか。彼女の言う通り、これが本当の別れなんだろうか。
既に三度目の別れなのに、僕の胸は苦しさでいっぱいになる。彼女の頬を涙が伝う様子を目にするだけで、息ができないほど辛くなる。
「元気でね」
僕は言った。
「大好きだよ」
その言葉に頷いて、彼女も「元気でね」と僕に言う。僕も頷いて、彼女をしっかり抱きしめた。もこもこのダウンジャケットの中には、確かに葉月がいた。
「さよなら」
二人で同じ言葉を口にする。
だけど、僕の目から涙は零れなかった。
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