doll 1 : ジュン

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「あ、あがった?」  シャワー上がりの美加に、キッチンから出てきたジュンがそう云って笑顔で迎える。  その手には湯気が立つミルクの入ったマグカップを持って。  そして「ハイ」と手渡されたカップを受け取ると、美加はゆっくりと中のミルクを飲み始める。 「あはは。今夜はちゃんと髪乾かしてるね」  ミルクを飲む美加の髪をひと房取ると、ジュンはそう云ってニッコリ笑った。  美加はマグカップに口をつけたまま、ジュンを上目遣いに見つめている。 「ん?どうしたの?」  何か云いたそうな美加の目に、ジュンはそう云って小首を傾げながら彼女の顔を覘き込む。  だが、美加は何も返答しようとしない。  ふとジュンから視線を外した美加は、口から離したマグカップに視線を落とす。 「美加? 黙ってちゃ分からないよ」 「ジュン……」 「ん?」  心配そうな美加の表情に、ジュンは更に小首を傾げて彼女を見つめる。  美加はゆっくりとジュンを見つめ返すと、ためらいがちに口を開いた。 「ジュンは、好きな人……いるの?」 「え……?」  突然の美加の言葉にジュンは一瞬ためらいをいせる。  吹っ切れたような美加は、たじろぐジュンに更に言葉を続けた。 「ジュンは、好きな人はいるの?」 「……そんなコト聞いてどうするの?」 「知りたいの……」 「……知っても、忘れちゃうんだよ?」
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