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柔らかな口調ではあるが、初めて見るジュンの真剣な表情と雰囲気。
美加は戸惑いながらも言葉を続ける。
「それでも……知りたいの……」
「オレは【ドール】だよ? 人とは……」
「ズルイ……ジュン、云ったよね? こうしている間は人間と変わらないって」
「美加……」
「なら、感情があるんでしょ? 気持ちだって……」
瞬間、ジュンは少し瞳を細め美加の唇に人差し指をそっと触れる。
それはまるで、その先を云ってはいけないかのように……
「ジュン……私は……」
「美加……オレは美加とは違う……ッ!?」
瞬間、ジュンの言葉が止まり彼の体が硬直する。
美加は手からマグカップを落とすと、ジュンに抱きついていた。
「何が違うの? こんなに温かくて、ちゃんとここに居るのに……」
驚きに見開かれたジュンの瞳だったが、ゆっくりと複雑そうに細められる。
「ジュン……」
切なげにジュンの名を呼んだ美加は、強く抱きしめその胸に顔を埋める。
ジュンの胸の中で目を閉じ必死にも“自分”を求めてくる美加だったが、ジュンはこぶしを握り締め彼女の背中に手を回すことなかった。
その時……
「ん……あ、れ……?」
美加の足がふらつき、膝から崩れ落ちそうになる。
……が、寸でのところでジュンが受け止めて床に倒れこむのを免れた。
「わた、し……」
「大丈夫? 疲れが出たのかな?」
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