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「コレでよし! と」
ジュンは美加のスマホを少し操作して、ソファーで眠る彼女にチラリと視線を向ける。
「幸せにね、美加……」
そう云って美加のおでこにキスをすると、ジュンは指輪を拾い来た時と同じ荷物を持って部屋から出て行く。
そしてエントランスホールについた時、外でタクシーが停まり中から男性が1人勢いよく飛び出してくる。
開いたエントランスですれ違いざま、男性はチラリとジュンに視線を向けた。
だがジュンは気にも留めず、前方を向いたまま歩き去る。
すれ違ったのは悟だった。
リングの効力が切れた今、ジュンと関わった人々の記憶から彼の存在は消え去っていたのだ。
悟がエレベーターに乗り込むと、閉まったエントランスのドア越しにジュンは彼を振り返る。
「……美加をよろしく」
ジュンは口許に笑みを浮かべながらそう云って歩き出した。
「カッコつけちゃって~」
不意に聞こえた声に、ジュンは足を止めて声のした方を振り返る。
そこには、車にもたれかかるようにして立っている悠生の姿があった。
運転席のウィンドウが開くと、ニヤニヤと笑みを浮かべた1人の男性が現れる。
「ジュンく~ん、睡眠薬とは考えたわね~」
「……見てたのかよ」
「ヤダ~。見えるワケないじゃな~い」
「……どうだか」
そう云ってジュンは指輪を指先で弾いて悠生の方へと飛ばす。
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