脳筋坊っちゃん。

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「喜鬼、お前は此れからお見合いをするんだ。御相手は、十鬼族の城ヶ沙鬼律鬼様。存知上げて居るだろう?」  優しく問うと、喜鬼は得意気に。 「はいっ!学舎で学びました。泰山王様の現補佐官様です!――でも、『お見合い』とは何ですか?」 「お見合いとは、婚姻を結ぶ為にお互いに顔を合わせる機会の事だ。お前は、律鬼様の伴侶となる為のお見合いを、此れからするんだ」  続いた鬼偉瑠の説明へ、喜鬼は眉間へ皺を寄せ己の中にある知識を辿る。 「婚姻、伴侶……?うぅん、と……あっ!父上と母上の様に、家族を作るのですね」  純真な瞳でそう答える喜鬼へ、鬼偉瑠が一瞬憂える。しかし、表情を神妙に。 「そうだ。此の見合いが成立すれば、私達とは又違う家族を律鬼様と作らねばならない……だから、お前は彼方でお前らしく、沢山頑張りなさい。けれどもし、城ヶ沙鬼様より此の家へ戻る様に言われたなら、此処へ帰って来なさい」 「鬼偉瑠……?」  雷鬼が、鬼偉瑠の言葉へ首を捻った。鬼偉瑠は、そんな父へ向き直り。 「我等は最早、此の話を受けるしかありません。只ひとつ、御願いをするんです。父上、耳を――」  雷鬼は、腕に抱く喜鬼を鬼璃へ任せ鬼偉瑠へ耳を寄せる。鬼偉瑠の考えは、取り敢えず喜鬼を城ヶ沙鬼家へ向かわせる方向。しかし、喜鬼の破天荒振りに彼方が根を上げる可能性が高いと。彼方から此の話を破談へ持ち込ませるのが、最終目的だ。只其れには、正式な婚礼を先延ばしにする様に乞う必要がある。もし、城ヶ沙鬼家と正式に婚礼の儀を交わしてしまえば、其れは十王への誓いとなる。そうなると、離縁も十王の元厳格に審査される。保証を頂けど彼方の名誉を傷付けたと、地獄内では光津鬼家が悪になり兼ねない。其れにもし離縁が成立せぬ場合、此処へ戻る事も困難となった喜鬼が、城ヶ沙鬼家でどんな扱いを受けるか。故、正式な婚礼を行う迄の猶予を頂くのだと。
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