22人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、一気に瞳を輝かせた。
「うんうん。初めてとは思えないくらい上手だぜ」
「味付けはかなり濃い目ですのね」
「酒に合うようにできてるからな」
とはいえ、ぐいっとリアムが煽るのはぶどうジュースだ。
「はぁ、生き返った。お嬢さん、恩に着るぜ」
「とんでもないです。わたくしも貴重な体験ができました」
「ははは。いいとこのお嬢さんのささやかな冒険譚か」
(……冒険譚?)
「リアムさん。わたくし、婚約者がおりますの」
「あ? うん、そうだろうな」
突然始まった身の上話に、リアムが姿勢を正した。
「ですが、婚約者が真実の愛を誓う相手はわたくしではありません。そのお相手はとてもお美しい方です」
「……」
「例えばの話。物語のなかでだけ、婚約者とわたくしが結ばれたら、とても幸せだと思うのです」
「……。なるほど!」
ぱんっ、とリアムが両手を叩いた。
クレアの真に言いたいことはきちんと伝わったようだ。
「困難を乗り越えて初恋が成就する物語。飯の礼だ、おれに書かせてくれ」
黒曜石のような瞳が、ぎらりと輝いた。
***
数日後。
クレアとリアムが再会したのは、リアムが調べてくれたという王都で人気のカフェだ。
「まぁ!」
運ばれてきたアフタヌーンティーセットは、小ぶりながらも見栄えがよくてクレアをときめかせた。
最初のコメントを投稿しよう!