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「身分違いの男女が障害を乗り越えて結ばれる物語。とてもすばらしかったですわ」
リアムは嬉しいとも悲しいとも、何ともいえない表情になる。
「あんた、さっきの発言もだけど、いいとこのお嬢さんだろ。こんなところに得体の知れない男と入って、本当によかったのか?」
「ええ。今はお忍びの時間ですから」
ぶっ、とリアムが吹き出した。
(何かおかしなことを言ったのかしら)
クレアは首を傾げた。
どのみち、一度死んだ命だ。どうして生き返ったのかは分からないが、生き返ったからにはやれなかったことをやってみたい。
「じゃあ骨付き肉の喰い方は知らないな?」
「ナイフを入れればすっと身が離れるものではないのですか」
「ばーか。そんなでかくて柔らかいもんじゃない。ほら来たぞ」
運ばれてきたのは甘辛いソースでくたくたに煮込まれた手羽中だった。
「関節のところでぽきって折る。そんで、おっきな方は、ほっそい骨が両脇に一本ずつあるから、一気に口に含んで骨を手掛かりに肉を口の中で抜くんだ」
リアムは説明した後、一気にそれを実行してみせた。
「くぅ~っ! 美味い! やっぱり青空亭の手羽中は最高だ!」
お嬢さんもやってみな、とリアムが促してきた。
クレアは恐る恐る手羽中を指先でつまんだ。
手づかみで食事をしたことはない。べたっとした感触が新鮮だ。
「いただきますわね。……!」
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