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ティースタンドには下からキッシュ、スコーン、ケーキ。
キッシュはほうれん草とサーモン。塩気が効いている。
スコーンはほろほろと崩れるのに口の中がぱさぱさしない。クロテッドクリームも上質だ。
ケーキは迷いに迷って、いちごのムースとオペラにした。
紅茶はシンプルながらも香りがよく、どの料理とも相性がいい。
「風の噂で予約は数年待ちと聞いたことがあります。相当苦労したのではないですか?」
「それはこう、つてを使ってなんとか」
にっ、とリアムが歯を見せて笑った。
相変わらずもっさりとしていてどこかだらしないのに、クレアはどきっとした。
「この前は勢いで食堂へ行っちまったが、お嬢さんとしてはこういう洒落た店の方がいいだろ」
「お気遣い、恐れ入ります。ですが前回のようなお店も新鮮な体験で面白かったですわ」
「意外と豪胆だよな。で、例のもんは持ってきてくれたか?」
「はい、どうぞ」
クレアは、オーウェンとの馴れ初めから今に至るまでを手紙に綴ってきていた。
それを受け取ったリアムはぱらぱらとめくり、目を丸くした。
「びっしりと、よくもまぁ。作家でもこれだけの量は書けないぜ」
「すごくがんばりました」
「……それだけ、お嬢さんがこの男のことを想っているってことだよな」
ぽつりとリアムが言葉を落とした。
「頑張らせてもらうとするか。お嬢さんの喜ぶ顔を見るために」
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