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「ありがとうございます」
深々とクレアが頭を下げる。
「やめてくれ。こんな平民に」
「どうしてですか? 感謝の気持ちは、きちんと言葉にしなければいけませんよ」
そのときだった。
「クレア? どうしてこんなところに!」
よく通る声が響き、誰もが声の主を見た。
「……オーウェン様」
「おいおい、待ってくれよお嬢さん。あんたの婚約者ってまさか」
通りを歩いていたのは時の人ことオーウェン。
寄り添うようにしているのはシャルロットだ。
クレアはすっと立ち上がると、ふたりに対して見事なカーテシーを披露した。
「ご無沙汰しております。魔物討伐、お疲れさまでございました」
「体調が悪くて伏せっているんじゃなかったのか……? それにその男は」
「こちらの方は劇作家のリアム・マクラレン様です。わたくしは彼のファンでして、今度の新作にアイディアを提供しているところです」
「言っている意味がよく分からないんだが」
オーウェンは明らかに困惑していた。
クレアはかまわずに、シャルロットへ話しかける。
「お初にお目にかかかります。クロムウェル伯爵令嬢クレアと申します。この度は、オーウェン様をサポートしていただき、ありがとうございます」
「え、えぇ……」
シャルロットもシャルロットで困惑しているようだった。
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