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お子様軍人ジェケット中佐と巨大金魚ダミアン その2
二
セントラルパークの一角に広がる貯水池。
一見、穏やかな水面の下に密かに棲んでいるのは、謎の巨大魚。それを釣り上げてみせるとジェケット中佐は意気揚々に宣言した。ニューヨーカー御用達のゴシップ記事によれば、ターゲットはクジラ並の体長を誇り、黄金の鱗をきらめかせ、いかなるモノでも食い荒らす大食漢。凶暴極まる性格の人喰い魚などとど派手に紹介されてはいるが、真の正体は謎のベールに包まれたままだ。
しかし、俺様は腑に落ちなかった。
何故、ジェケット中佐が自ら釣ろうとしているのか?
奴さんは釣りを趣味にしている訳でもないし、軍がわざわざ出張ってくる事件でも無い。それとも、巨大魚を釣り上げて、メディアに一斉に取り上げられたい……そんな下心があるのか?
《天才お子様軍人、セントラルパークのヌシを釣る!》
そういえば、先月からお小遣いを減らされたと奴さんが嘆いていた事を思い出す。ならば、怪魚からむしりとった黄金のウロコを高額で売りさばくつもりか? いずれにしても、危険度の高いミッションに違い無い。
しかし、しかしだった。
中佐の口から語られた動機とは、俺様の予想を遥かに超えたモノだった。
「此処だけの話だよ。怪魚の正体は……マイホームから逃げ出した、我輩のペットなのだ」
「ペット?」
突然のカミングアウトに、俺様は空いた口が塞がらなかった。
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