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お子様軍人ジェケット中佐とカラ傘乙女桜子さん その4
四
降りしきる雨の日に連れてきたジェケット中佐の念願の恋人『桜子』さんとは一体、何者なのか? 翌日、俺様は知り合いのネクロマンサー、テキサス・ゴトーに相談することにした。サバイバルナイフを舐めながらゴトー曰く、
「それは妖怪の類ダネ。アミーゴ」
江戸時代に活躍した稀代の傘職人『ゲンリュウサイ』。実は、彼が作り出した傘はいずれも妖気が取り付いた逸品らしい。『カラ傘乙女三姉妹』の正体とは、持ち主に多大な影響をもたらす危ない妖怪だったのだ。
「特に三姉妹の中で一番厄介なのが、次女の『桜子』ダネ」
長女『楓子』は持ち主の恋を成就させる、いわゆる恋のキューピッド的な役割を果たすだけで特に害は無いのだが、次女の『桜子』は全く違った。他人を世話することよりも自分が恋の当事者になりたいと願う。故に、傘の持ち主と無理やりに恋仲になろうとするのだ。
「……ということは、中佐は和傘の『桜子』さんと恋仲になったと?」
「その通りさ、サンチェス。しかしだ『桜子』と付き合ってもいずれは別れが訪れるネ」
「ホワイ、どうしてだ?」
和傘の持ち主にしかその姿が見えないとはいえ、恋仲にある間は『桜子』は確かに此の世に現界していることになる。しかし、現世に居続けるためにはパワーが必要だ。それを『桜子』は持ち主から吸い取って生きながらえているのだ。哀れかな、恋の相手は最期には生気を搾り取られて、ヘチマのたわしみたいなカラカラの姿になってしまうらしい。
「それでは、このままではジェケット中佐は……ヘチマのたわしに?」
マズイ、マズイぞ! 俺様は中佐がたわしになった姿を想像してしまった。
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