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今年、初めての雪が降った。
肌を刺すような冷たい風のなかで寒さに身体を震わせ、マフラーに顔をうずめて空を見上げる。
「初雪だね!」と君は嬉しそうに笑った。
そんな君を見て、自然と頬がゆるみ僕も微笑みかえす。
君と見るはじめての雪。
君と一緒に踏みしめる、はじめての雪道。
こうやって、これからもずっと同じ景色を一緒に見たいと思うのは欲張りなんだろうか。
夜の街灯に照らされた雪は白さが引きたち静かに降り積もる。
真っ暗なはずの道は雪で白み、その色を変えていく。
君の歩幅にあわせて歩いた足跡は残り、振り返ると足跡がふたつ並んでいるのが何だか嬉しくて顔を見合わせ微笑み合う。
「雪だるま作ろっか!」と楽しそうにしている君に「明日には溶けるよ」と僕が言うと、
少し拗ねたように頬をふくらませながら
「いいのっ!」と言って笑った。
もう少し。もう少しだけ⋯と手を繋ぎながら遠回りをして歩くかえり道。
家の前に着くと「私、もう帰らなくちゃ」
繋いでいた手のぬくもりがそっと消えていき、寂しさに胸がしめつけられる。
名残り惜しくて⋯まだ帰したくないと思う僕はやっぱり欲張りだと思う。
離れた手をもう一度つかみ、君を引き寄せ抱きしめて
そっと顔を近づける。
唇と唇が触れる距離に二人の吐息が混ざり合いくちびるに残る熱がじんわりと広がっていく。
あの日は雪が降る音しか聞こえない静かな夜だった。
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