幻のハイウェイ

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         -6- 「山本が乗っていたジムニーの積算走行距離を教えてもらえませんか」  前に僕を聴取した五分刈りの刑事を呼んで僕は訊いた。 「それがどうしたというんだ」 「何かの手掛かりになればと思いまして」  刑事は取調室から一旦出たあと、ファイルを手にして戻ってきた。 「走行距離は188918キロ」 「あり得ない!」 「どういうことだ?」 「あの日、午前11時に僕はジムニーのメーターを見たんです。積算走行距離は丁度188888キロでした。切りのいい数字だったのではっきりと覚えています」 「札幌から室蘭までは100キロ以上はある。だからメーターの表示は189000キロ以上になっているはずだが、しかし午後2時は確かにジムニーは室蘭の地球岬にあった。これは確証が取れている」 「そうです。ジムニーは走っていないんですよ」 「は? 空でも飛んでいったとでもいうのかね?」 「メーターがカウントされなかったのはジムニーが地面を走っていなかった証拠です」  刑事は目を丸くした。           *  山本のジムニーの積算距離計が正確に動作しているのが確認された。それから捜査の手が、ある小さなレンタカー屋に及ぶまでにはそれほど時間がかからなかった。山本修二と月岡恵美は黙秘を続けていたが、カスガ・レンタカーの社長、吉川俊造が参考人として事情聴取を受けたことを知ると、あっさりと鳥居美香子の殺害を認めた。  僕と由美はニュース速報で二人が殺人容疑で再逮捕されたのを知った。
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