理想と現実の2人

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じいちゃんはアルツハイマー型認知症だ。 性格はとっても明るくて朗らか。週4回行っているデイサービスでも人気者らしい。 体もしっかり動く。腰や膝が痛いとかも一言も言わない。トイレだって滅多に失敗しない。すごく元気だ。 だけど、物忘れがすごい。判断力も落ちてしまった。 毎日、食事の時には具体的にいつも自分が座っている席を説明してもらわないとわからない。 服を着る時も、誰かが見守っていないとズボンを2枚履こうとしたり、素肌の上にセーターを着たりする。 かっこいい言い方をすると、家族皆でじいちゃんのことを見守っている。ガラの悪い言い方をすると、ガン見している。 認定調査を受けて初めて要介護度が出てから、もう5年になる。 その間じいちゃんはずっと要介護2だ。 だけど、ずっと同じ状態なわけではない。 少しずつ少しずつできないことが増えたり、理解できなくなったり、記憶できる時間が短くなったりしている。 父さんも母さんも、私もとっしーも、そういうものだと思っている。 父さんは「仕方ない」と言う。 母さんは「良太郎さんの元々の特長はずっと変わらないから問題ない」と言う。ちなみに良太郎さんとは、じいちゃんのことだ。 私は母さんと同じような意見だ。「忘れちゃってもできなくなっても、じいちゃんはじいちゃんだからそれで良い」 とっしーは「興味ない」と言っている。その割には、意外にじいちゃんのことを気にかけている。まあ、中学2年生の男子ってそういうお年頃なのかもしれない。 ばあちゃんは「こんなに世話してあげてるのに『バカ』とか『たわけ』とかそんなことばっかり言って、ホントにもう! デイサービスでは何でもやってるらしいじゃない!? 家でできないなんて甘えてるのよ!」と元気に嘆いている。 ばあちゃんは本当に根気強い。 もう少し諦めたら楽になるのにな。
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