理想と現実の2人

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「お父さん! 皆が心配してくれてるんだから、ちゃんと言うことを聞きなさいよっ!」 突然ばあちゃんが立ち上がって、じいちゃんのところへ突進していく。鬼の形相というのはああいう顔なんだろう。 じいちゃんも機敏な動きで立ち上がり、ばあちゃんを睨み付ける。 「お前らはなあ、ギャーギャーうるせえんだよ! 全員揃ってクソだわけだ!  ばーか、あほんだらー!」 「なんですって!? どの口がそんなこと言ってるの!?」 目にも留まらぬ速さで、ばあちゃんがじいちゃんの胸ぐらをつかんだ。 だが、じいちゃんも負けてはいない。ばあちゃんの胸ぐらをつかんでいる。 このくらいなら、今までにも普通に見たことがある。とっしーも母さんももちろん私も特に心配はしていない。 だが時々、バッチンバッチン音が鳴るくらいに叩きあったり、突き飛ばしあったりということに発展することがある。 そんな時には、3人のうちの誰かが止めに入る。 昔は放ってあったけど、母さんが「足でも折ったら寝たきりになっちゃうかも」と言い出したからだ。 2人とも、いつまでも若い時と同じ調子で『なかよくけんか』しているのだ。 それがいいんだか、悪いんだか、私にはよくわからない。 とりあえず夫婦喧嘩の挙げ句、寝たきりになるのだけは絶対に阻止しなければならない。
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