理想と現実の2人

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当たり前だけど、じいちゃんとばあちゃんは元々は赤の他人だった。 だから、知り合ったばっかりの頃は普通に会話していたのではないだろうか。 では、いつから『なかよくけんか』するようになったのか? 父さんも子どもの頃から、じいちゃんとばあちゃんのバトルは日常の風景だと思っていたと言っている。 つまりは、あのけんかには50年以上の歴史があるわけだ。 私はまだ生まれてから18年だから仕方ないのかもしれないが、私にはじいちゃんとばあちゃんみたいに『なかよくけんか』する相手がいない。 あそこまで言いたいことを言い、気持ちを全てぶつけてしまうなんてこわくてできない。 大切な人が傷ついてしまうかもしれないし、今まで築いて来たものが全部壊れてしまうかもしれない。 10年後にもそんな相手が現れるとも思えない。 羨ましいわけではないけど、じいちゃんとばあちゃんてすごいな、とは思う。 ばあちゃんは結婚する時、じいちゃんとこんな毎日を過ごすって予想してたかな? じいちゃんは理想の結婚生活を過ごしているだろうか? もしかしたら、現在の生活はばあちゃんの理想とは違うかもしれない。 でも2人は案外思いあっていて、相思相愛なんじゃないかな? どうですか? ばあちゃん。 「お父さん! 今日はデイサービスの日だから早く歯を磨いちゃいなさいよ! ダラダラしてるとお迎えがみえるわよ!?」 「あー? 俺はもう歯をみがきましたっ!」 「はあ!? 嘘言ってんじゃないわよ! みーさん、何とかしてちょうだい!」 やれやれ、けんかするほど仲のいい夫婦も時々助け船が必要になるようだ。仕方ないなー。 「はいはい。じいちゃん、洗面所に行くよー!」 【了】
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