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夕食は、四人で鍋を囲むことにした。夫婦二人だと持て余す大きな鍋も、子供がいるとはいえ四人なら丁度いい。
「それにしても、おじいちゃんもおばあちゃんも名前変えるなんてね、楽しくやってるならいいけどさ」
娘は改めて、自身の父母の決断について話題にした。
「まぁね。やってみると意外と楽しいのよ」
雄宇一は鍋から豆腐を小皿によそいながら応えた。
「おじいちゃんの名前な、アナタっていうんだ、面白いだろう?」
「……」
アナタは凛に話しかけたが、いまいち意味が分かっていないのか反応が無かった。
「おばあちゃんの作る鍋美味しいよね、うちと何が違うんだろう?」
娘は熱そうに肉をほおばりながら、声を漏らす。
「あら、娘のあなたは、おばあちゃんって呼ぶのは変じゃない?」
最近、自身がどう呼ばれるのかについて敏感な雄宇一は、違和感にすぐに気がついた。
「そうかな、確かに前はママとパパって呼んでたけど……。この子生まれてから、夫のことはをパパって呼ぶようになったし、そうしたら、やっぱりおばあちゃんとおじいちゃんじゃない?」
「うーん、まぁそうかもしれんが。あ、凛。ここにお肉あるから取ってあげよう」
「ありがとう、おじいちゃん」
「うむ……」
雄宇一が感じた違和感と、自分が感じた違和感は同じものに違いない。アナタには確信ができた。
「ごちそうさま。美味しかったね、凛。おばあちゃん、凛をお風呂に入れてくるね」
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