3人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
◇
数日あったある日。いつものようにテレビの前に座った和彦が恵子、もとい雄宇一へ声をかける。
「おうい、お茶くれ」
「はい、あなた」
「うむ。久しぶりに名前で呼んでくれたな」
「? ……なにを言っているの?」
困惑する雄宇一をよそに、和彦はゴソゴソと財布を取り出し、免許証を引っ張り出した。まさか、とおもいながら雄宇一はそのカードを覗き込んだ。
「俺の名前は、あなただ。改名してきた」
「えぇ! そんなどうして」
「家庭裁判所で」
「それは知ってるわ」
「名前の由来は、アン・ハサウェイのアと、ナタリー・ポートマンのナと、ナタリー・ポートマンのタだな」
「ナタリー・ポートマンがかぶってるじゃないの。タで他に思いつかなかったの?」
「雄宇一は、名前を呼んでくれないと言っていただろう? ……でもよく考えたら俺だって最近、あなたとしか呼ばれてないぞ、これからはアナタが名前になるんだ、よろしくな」
こうして、雄宇一とアナタという名前になった。鈴木恵子と鈴木和彦はもともと気が合うのだ。
最初のコメントを投稿しよう!