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お互いが改名をするという雄宇一とアナタの不思議な夫婦生活は、思いのほか順調だった。名前を変えたことで呼び方に戸惑いがあるかと思ったが、自然と出てくる言葉「おうい」と「あなた」で呼び合うだけなので思ったよりもスムーズだった。
「おうい、お茶を」
「わかりましたよ、あなた」
なるほど確かに。名前で呼んでくれていると思うだけで、生活にハリが出てくるな、とお互い感じた。新婚生活ほどとは行かないが、ここは二人だけの空間。どんな理由があるにせよ、変化が起きるということは楽しいものだった。
ここ2年代り映えしなかった生活が、なんだか、部屋の中そこら中に楽しいものが転がっているような、そんな感覚だ。カレンダーの二ヶ月後のページに「アナタの誕生日」と書き込みながら、雄宇一はクスリと笑った。
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