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薄暗い寝室でひとり、ベッドに倒れ込んで泣いていた。もうどれくらいこうしているのかも分からない。現実から目を背けるようにして、ただひたすらにとめどなく溢れ出る涙で枕を濡らしていた。
紗那を愛していたからこそ。紗那が大事だったからこそ。裏切ることができなかった。心の底から愛した人が心の底から愛した命だから。たとえ引き換えに大切なモノが消えてしまうと理解していても。
それでも。納得なんかできる訳がない。受け入れられる訳がない。どうして紗那があんな目に遭わなければならなかったのか。俺たちが何をしたというのか。握った拳をベッドに強く叩きつけ、ただ運命を呪うことしかできなかった。
「京也君。入るぞ」
部屋に入ってきたのはお義父さんだった。身体を起こしてベッドの縁に座る。
「お義父、さん。俺、俺……」
「辛かっただろう。何も言わなくていい」
そう言って、肩にそっと手を乗せてくれる。辛いのはお義父さんとお義母さんも同じはずなのに。それなのにこうして俺なんかを気遣ってくれることに、また涙が止まらなくなった。
「後は私たちに任せなさい」
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